私たちに身近な生物多様性 35
都内を流れる石神井川には見事な桜並木がある。今年の花見は自粛してしまったが、近所に住んでいることもあり、川沿いの桜並木の散歩は私の日課だ。
同じ川沿いで、遺伝子も同じソメイヨシノが多いからか、ほぼ一斉に開花するのだが、何故か実の熟し具合は木によってばらばらだ。
桜の実は、様々な野鳥にとって貴重な自然の恵みとなっているが、その中には、スリランカなど南アジア原産の緑の大型のインコ、ワカケホンセイインコもいる。
5月の下旬、一本の桜にワカケホンセイインコが群がっていた。双眼鏡や望遠レンズでのぞくと、赤紫に熟した実をさかんについばんでいる。改めて手近な桜を見上げると、こちらの実はまだ黄緑色で大きさもこぶりだ。一足早く色づいた小さな「サクランボ」に目ざとく集まってきたようだ。
インコが群れで来ているからか、その木には普段なら桜の実に集まってくるキジバトやヒヨドリ、ムクドリなどの姿は見えなかった。
以前このコラムで、東京大学本郷キャンパスのワカケホンセイインコについて紹介したときにもふれたが(赤門の空を舞う緑のインコ)、ワカケホンセイインコは、日本にペットとして輸入されたものやその子孫たちが籠から逃げ出し、あるいは放たれて、東京、神奈川などで定着している。