最近、「グリーンリカバリー」という言葉が世界に広がりつつある。新型コロナ禍で大きな痛手を追った欧州が発信元で、「気候変動対策をコロナ後の経済復興の中心に据えよう」という動きだ。一見とっつきやすい言葉だが、その本質に迫るには、これまで20年以上に渡って環境・CSR問題に取り組んできた「欧州の本能」と、「企業とNGOのパワーバランスの変化」を理解すること抜きには難しい。(オルタナ編集長・森 摂)
「グリーンリカバリー」には、いくつもの伏線がある
グリーンリカバリーの名前は4月14日、EU(欧州連合)加盟国12ヶ国の大臣とグローバル企業39社のCEOが「グリーンリカバリー・アライアンス」を結成したことで世界に広がった。その本旨として「新型コロナからの復興経済対策で気候変動を重視すること」をEU内外に求めた。
これは一種のイニシアティブだ。日本語でも「イニシアティブ(先導)を取る」という使い方をするが、サステナビリティの領域では、「誰かが発議をして、何らかの社会課題を解決するために集まったネットワーク組織や、それによって明文化されたルール」を指す。
イニシアティブの代表格には、国連のアナン事務総長(当時)が1999年のダボス会議で提唱し、翌年に発足した「国連グローバル・コンパクト」(人権、労働、環境、腐敗防止に関する10原則)や、『ビジネスと人権』のための枠組」などがある。(サステナビリティ領域における各種イニシアティブについてはCSR検定2級テキストに詳述)
「グリーンリカバリー」には、いくつもの伏線がある。直近のものは、欧州委員会が2019年12月11日に発表した気候変動対策「欧州グリーンディール」だ。その骨子は、産業競争力を強化しながら、2050年までの温室効果ガスの排出実質ゼロ(クライメイトニュートラル)を目指すものだ。
グリーンニューディールではこのほか「エネルギー部門の脱炭素化」「建物を改修によるエネルギー使用量削減」「よりクリーンな公共交通機関の展開」「サーキュラーエコノミー(循環型経済)の推進」などが盛り込まれた。
EUの環境政策の原点は「リスボン戦略」