「サステナブル★セレクション」を始めた思い

株式会社オルタナと一般社団法人CSR経営者フォーラムは2020年8月3日、「サステナブル★セレクション」の公募を開始しました。なぜ私たちがこのようなサービスを始めたのか、その思いをご説明いたします(オルタナ編集長・森 摂)

オルタナは2007年3月に創刊しました。以来13年間、CSR、サステナビリティ、サステナブル・ビジネス、エシカル消費、SDGs(持続く可能な開発目標)、ESG投資などのテーマで報道を続けてきました。

創刊間もないころ、オルタナ5号(2007年12月発売)では「オーガニック1%の壁」と題した第一特集を掲載しました。

「日本の農産物のうちオーガニック(有機)が占める割合は1%に満たず、欧州諸国の4~10%に遠く及ばない。有機農業とは縁遠いと思われていた中国にも遅れをとった。日本でなぜ「有機」が伸びないか。1%の壁を越えるには何が必要なのか」(5号第一特集リード文)

オルタナ14号(2009年7月発売)では「シャンプーで世界を変える!」と題した第一特集を展開しました。

「環境や社会問題を常に考えながらモノやサービスを選ぶ人はまだまだ日本には少ない。その原因は、企業側にも生活者側にもある。ふだん何気なくスーパーの特売品を選ぶことが多い「シャンプー」を題材に、どうすれば日本に「グリーンな生活者」が増えるかを考えてみた」(14号第一特集リード文)

それから時が経ち、2015年になるとSDGsが国連で採択され、以来、日本でもSDGsのバッジを胸に付ける人が増えました。国別でSDGsバッジを胸に付けている人の割合は圧倒的に日本が多いと感じます。

SDGsは2020年春から小学校での新学習指導要綱にも入り、子どもたちもSDGsを学ぶ時代になりました。2015年にはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国連責任投資原則(PRI)に署名し、ESG投資の流れが日本にもやってくることになりました。

これほどサステナビリティの波が来ているのに、SDGsという言葉も有名になったのに、それでもエシカル/グリーンな消費は、なかなか増えないのです。例えばオーガニック農産物の作地面積のうち「有機農業」の割合(2017年)はわずか0.5%です。2005年(0.16%)から、0.4ポイント弱しか増えていません(農水省資料から)。

2007年に「オーガニック1%の壁」の特集記事を組んだ時、日本にはたくさんの「1%の壁」があることを知りました。2006年当時、「自然エネルギーが電力供給量に占める割合」が1%でした(現在は約8%)。そのほか、「上場企業の取締役における女性比率」も1%以下でした(2019年は4.9%、東京商工リサーチ調べ)。

フェアトレード商品や原料が全体の貿易量に占める割合は、まだ1%にも満たないようです(オルタナ推計)。オーガニックコットンも、いまだに世界の綿花生産量の1%未満です。(Textile Exchange調べ)

このようにサステナブル、グリーン、エシカルな消費は日本に根付いているとは言えません。そこで、弊誌「オルタナ」がある種のエンドースメント(推薦)をすることで、これらの製品・サービスが世の中に注目され、認知度を高め、売れる仕組みを作ろうと考えたのです。

幸い、ミレニアル世代やZ世代の間では、こうしたサステナブルや環境配慮型の製品/サービスへの関心が少しずつ高くなっているようです(海外では顕著)。いま25~40歳のミレニアル世代は、世界の世代別人口で最大規模になりつつあります。

日本でもこうしたサステナブル、エシカルな消費を推進し、こうした製品が生産・流通・小売業の各段階で存在感を高めるようになると、それが途上国の環境負荷を低めたり、人権侵害を食い止めることにつながるのです。

まさにSDGsの実現は、皆さんの消費を変えることから始まります。単にSDGsのバッチを付けていれば解決しないことは、言うまでもありません。オルタナは、よりサステナブルなビジネスを推進することがパーパスであり、どれだけ時間が掛かっても、サポートし続けていきたいと考えています。

森 摂(オルタナ編集長)

森 摂(オルタナ編集長)

株式会社オルタナ代表取締役社長・「オルタナ」編集長 武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授。大阪星光学院高校、東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。編集局流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。環境省「グッドライフアワード」実行委員、環境省「地域循環共生圏づくりプラットフォーム有識者会議」委員、一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事、日本自動車会議「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」選考委員ほか。

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