廃材が美しい家具に 震災の傷を癒す

「再生」が人の心を救う

リキンドルを率いるジュリエットさんは、作業療法士でもある。 17年にも及ぶキャリアを積んだ彼女は、リキンドルの活動を「セラピューティック」ととらえている。

見過ごしがちな、不要なものに目を留め、それを工夫して、有用なものに変身させることは、人々の心の健康に良いというのだ。「マイナスのものをプラスに変える力」を自分が持っているのを意識することは、その人にポジティブなエネルギーを与えてくれる。

それは、この活動に携わる人に限ったことではない。自宅が意志と関係なく、倒壊もしくは取り壊され、家と共に育んだ家族の思い出も失った家主たちの心も癒している。取り壊された家の一部が、美しい家具として生まれ変わるのを目にし、家を失ったことは無駄に終わったわけではないと、家主は前向きに考えられるようになるのだ。

たとえ、その家具が自分のものにならなくても、誰かが気に入り、大切に使ってくれることが分かっているだけで、無力感や失望感から救われる。廃材が世界で一つしかない、美しい家具に生まれ変わる過程に、被災地クライストチャーチが復興していく姿が重なる。

*雑誌オルタナ34号(2013年9月30日発売)「世界のソーシャルビジネス」から転載

mari

クローディアー 真理・ニュージーランド

1998年よりニュージーランド在住。東京での編集者としての経験を生かし、地元日本語月刊誌の編集職を経て、仲間と各種メディアを扱う会社を創設。日本語季刊誌を発行するかたわら、ニュージーランド航空や政府観光局の媒体などに寄稿する。2003年よりフリーランス。得意分野は環境、先住民、移民、動物保護、ビジネス、文化、教育など。近年は他の英語圏の国々の情報も取材・発信する。執筆記事一覧

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