■世界のソーシャルビジネス アジア・オセアニア編 日本
青果市場や運送業者から廃棄予定の木製パレットを引き取り、汚れや割れなど木材の表情を生かしたオーダーメイド家具などにアップサイクルするSIL社(和歌山県有田川町)が注目を浴びている。これまで活用されずに廃棄されてきたものに新たな命を吹きこむ画期的なアイデアだ。(上野山 友之)
運送や倉庫での製品保管などで重宝されている木製パレット。年間約4500万枚が生産されているとされるが、それらは幾度も使用されるなかで汚れ、傷つきやがては活用されることなく、廃棄されていく。
年間約90万トンに上ると推定される廃木製パレットは、これまでチップ化や燃料化、エネルギー回収を伴う焼却などでリサイクルされてきたが、新たな活用に取り組む事業者が現れた。
「有田みかん」や「ぶどう山椒」で知られる有田川町にあるSIL(エスアイエル)社は廃棄される予定の木製パレットを引き取り、割れ、ヒビ、汚れ、穴などを木材の豊かな表情と捉え、家具などにアップサイクルしている。
同社は引き取ったパレットを鉄工所と協働で自社開発したバールを用いて解体し、一つ一つの木材の大きさや傷など、個性を見極めて選別。サビや変形など手作業で抜くことが難しい釘を専用の機械で抜き、成形、圧着、研磨などを施し、独特の味と風合いで人気を集めるオーダーメイド家具や展示用什器、キャンプ用品へと生まれ変わらせる。
現在は、自社や協力店舗で、ダイニングテーブル5万円~、イス3万円~、棚5万円~などの価格帯で販売している。
廃棄資材に命吹き込む