花王は10月14日、インドネシアの小規模パーム農園の生産性を向上させ、RSPO(持続可能なパーム油の生産と利用を促進するための円卓会議)認証取得を支援するプログラム「SMILE」を発表した。現地で油脂製品製造・販売を手掛けるアピカルグループ、農園会社アジアンアグリと協働で実施する。(オルタナ副編集長=吉田広子)
パーム油は、加工食品、食用油、バイオディーゼル燃料、洗剤原料などに広く使われ、世界で最も消費されている植物油だ。主にインドネシアやマレーシアで生産されている。
一方で、パーム油の原料となるアブラヤシのプランテーションが急速に拡大し、森林破壊や生物多様性の損失、先住民の人権侵害や強制労働、児童労働などさまざまな問題を引き起こしている。
加えて、小規模農家は効率的な栽培方法などを知らず、貧困から抜け出すことが難しい現状もある。インドネシアではパーム果実の生産量の約30%が小規模農園によって生産されているという。
「インドネシアとマレーシアで生産されるパーム油は680万トンで、花王はその約7%にあたる50万トンを製品に使用している。問題の本質をとらえて、花王らしい取り組みを進めていきたい」。そう語る根来昌一・花王購買部門統括常務執行役員は、現地のNGOに説明会を開いてもらい、小規模農園との対話に努めた。
「直接話を聞くことで、家族経営のような独立小規模農園は、RSPOの枠組みに入ることもできず、取り残されてしまっていることが分かった」(根来常務執行役員)
そこで、花王、アピカルグループ、アジアンアグリの3社は、生産性向上に向けて農園の管理方法や技術を指導していくプロジェクト「SMILE」を立ち上げた。RSPO認証取得を支援し、収穫量を増やすことで、新規農園開発を抑制するとともに、生産者の生活改善を目指す。
「SMILE」プロジェクトは、2020年から2030年までインドネシアの北スマトラ州・リアウ州・ジャンビ州で実施される。対象の小規模農園数は約5000件で農地面積は計約1万8000ヘクタールに上る。将来的には、支援した小規模農園からパーム油を調達することも検討していく。
一方で、パートナーとなるアピカルグループは、スマトラ島の貴重な熱帯低地林「ルーセル・エコシステム」で森林破壊を起こしている生産者からパーム油を調達しているとして、国際NGOのRAN(レインフォレスト・アクション・ネットワーク)から批判されたばかりだ。アピカルと合弁会社を持つ花王にも、その非難の矛先が向いている。
これに対し、根来常務執行役員は「こうした事実を受け止め、すぐに該当の生産者との取引を停止した」と説明し、責任ある原材料調達を推進していく姿勢を示した。