「カーボンニュートラル」って本当?
その背景には、バイオマスを燃やしても二酸化炭素排出量(CO2)としてカウントされない「カーボンニュートラル」の考えがある。
カーボン(炭素)を大量に含んだ木材を燃やしても、木材は成長過程で光合成によりCO2を吸収し、炭素の形で体内に貯め込んでいる。その木材を燃やしてCO2を出しても、CO2はプラスマイナスゼロ、つまりニュートラル(中立)であるため、CO2排出量としてカウントしないでよい、というのがカーボンニュートラルの考え方だ。
これはレジ袋有料化の例外とされた「バイオマス素材の配合率が25%以上のもの」の根拠にもなっているものだ。バイオマスがプラスチック重量の25%以上を占めるレジ袋については、バイオマス素材がカーボンニュートラルな素材であり、地球温暖化対策に寄与するとして、有料化の対象外とされた。
しかし、カーボンニュートラルの考え方の危うさについては以前から多くの科学者や環境団体によって指摘されている。実は最近、米NGOが日本の経済産業省や林野庁長官などに要請書を提出したのだが、そのなかにもこの指摘があった。
米NGO17団体が経産省宛てに要請
さる10月2日、米NGO 17団体はFoE経由で日本の関係機関宛てに、木質ペレットをFITの対象から外すよう求める要請書を提出した。
このなかで、米国南部で天然林を伐採して木質ペレットを生産している現状を示し、この木質ペレットを「再生可能エネルギー」の名の下で生産消費することは「グリーンウォッシュ」(見せかけの環境配慮)だと指摘。日本に対し、再生可能エネルギーの定義と「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」から木質ペレット森林系バイオマスを除外することを求めた。
目標が温室効果ガスの削減であるなら、再生可能エネルギーとして木質ペレットを使用することは、目的に合わないというのがその理由だ。
洪水を防止したり、生物多様性を保全したりするなどの機能を持つ天然林を伐採し、その丸太全体を利用して作った木質ペレットを燃やすことは、確かにカーボンニュートラルどころの話ではない。
米ノースカロライナ州政府も公式文書の中で、木質ペレット産業が伐採、加工、輸送を通じて同州の炭素排出量を増加させていることを明確に認めているという。
木質ペレット生産現場の実態は、私たちが持つ「バイオマスは環境に良い」というイメージとはかけ離れているようだ。
満田事務局長は、「FITの調達基準はゆるゆるで、こうした非持続可能な燃料を排除することができていない」という。
昨今、バイオマス発電については良い話を聞かない。カーボンニュートラルの考えは確かに一理あると思う。しかし、HIS角田バイオマスパーク(宮城県角田市)や三恵福知山バイオマス発電所(京都府福知山市)のバーム油発電も同様だが、カーボンニュートラルだから環境負荷が低いと考えるのは早計だ。
直接生産地を見る機会のない輸入バイオマスを原料とする発電については、特に用心が必要だ。