オランダの出版社エルゼビアが、SDGs(持続可能な開発目標)について過去5年間の世界の研究動向を分析したところ、論文数が410万本にのぼり、ゴール別では健康、エネルギー、気候変動に関するテーマが多かったことが分かった。(武田 和代)
一方で、先進国と貧困国で扱うテーマが異なる中で、両者の協同が限定的だったり、全体的に性やジェンダーに関する視点が不十分であったりすることも浮き彫りになった。
ゴール3「健康」、ゴール7「エネルギー」、ゴール13「気候変動」
エルゼビアは、アムステルダムに本拠を置く。医学や科学技術を中心に専門書や学術誌を手掛ける、ヨーロッパでも歴史ある学術専門出版社の一つだ。SDGsは2030年を目標年とした17の目標を掲げており、世界的に研究が進んでいる。
同社は、意思決定や政策策定での科学データの活用促進を目的に、2015年から2019年に出された論文などを分析して、報告書「The Power of Research to Advance the SDGs(SDGsの促進に研究がもたらす力)」にまとめた。
報告書によると、この5年間で発表されたSDGs関連の論文は410万本に達し、中でも出版数の上位3カ国はアメリカ、イギリス、中国。日本からも20万本以上の論文が発表されており、これは同時期における日本の研究全体の約30%だという。
貧困やジェンダー課題を取り上げた論文は少なく
研究テーマをSDGsのゴール別でみると、日本・世界ともに、ゴール3「すべての人に健康と福祉を」、ゴール7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、ゴール13「気候変動に具体的な対策を」の順で多かった。
逆にゴール1「貧困をなくそう」に関連する論文が最も少なかった。またSDGs研究には、ジェンダーを考慮する必要があるという認識が高まっているものの、全体的に性別・ジェンダーの視点が十分でないことが明らかとなった。
今後、こうしたSDGsの研究成果が、政策策定などの具体的な行動に転換されることが必要で、科学、政策、社会の間の連携強化と、それを推進する強力なリーダーシップが求められている。