ヒノキの桝をアートに――。リクルートホールディングスが運営するクリエイションギャラリーG8とガーディアン・ガーデンは、12月1日から2021年1月20日までチャリティープロジェクト「クリエイションプロジェクト2020」を開催する。今年は大橋量器(岐阜県大垣市)の桝職人と160人のクリエイターが協同でアート作品を制作した。木桝を専門に製造・販売する業者が減るなか、伝統的な桝をアートと融合し、多くの人に木桝の魅力を伝える。(オルタナ編集部=松田ゆきの)
職人とクリエイターが桝を共同制作
「クリエイションプロジェクト」は1990年にクリエイターたちの作品を販売し、収益をチャリティー活動に充てる企画として始まった。今年は「160人のクリエイターと大垣の職人がつくるヒノキ枡『〼〼⊿〼(益々繁盛)』」というテーマで展示を行う。岐阜県大垣市の職人がヒノキ桝を作り、桝の外側にクリエイターがデザインを施した。
会場で展示されたヒノキ桝は、2021年1月末までオンラインショップ「ポンパレモール」で買うことができる。ヒノキ桝の販売収益金は、国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」に寄付され、新型コロナウイルスや2020年7月豪雨の被害を受けた子どもたちの支援に充てられる。
プロジェクトを運営するクリエイションギャラリーG8は、「1月から今年のプロジェクトでどんな日本のものづくりの現場とコラボするかを考えていました。木桝の伝統的かつ新しい使い方に挑戦している大橋量器を知り、企画提案しました」と、経緯を説明する。
日常が変わっても桝を楽しんでほしい
大橋量器のある岐阜県大垣市は、木枡の全国生産量の8割を占める。しかし、1990年代に7社あった木桝専門の製造業者は現在3社のみ。それでも2019年度には残る3社でおよそ200万個の木桝を作り、うち約120万個を大橋量器の職人23人が作った。
ヒノキ桝の材料は、高級建築材や建具材の端材だ。板にした端材を組み合わせて桝を作り上げる。桝は図り、酒器、縁起物として親しまれてきた。だが、林業の縮小や和室の建築が減ったことで、端材の量も少なくなった。
さらに、2020年は新型コロナウイルスの蔓延で祝いの席が減り、枡を使う機会が少なくなった。大橋量器の売上も4月から10月までの間、前年比で55%減少した。
大橋量器代表取締役の大橋博行さんは、「コロナ禍で日常が変わっても桝の魅力を楽しんでもらうために、桝の老舗の私たちがクリエイターたちと一緒になって人を幸せにできれば」と、本プロジェクトに参加した理由を話す。
本物の桝にデザインを施した作品は、桝のヒノキの香りや木目の美しさも楽しむことができる。大橋量器はこれからも桝の魅力を発信する新たな方法を探る。