いまメキシコのカンクンで、第16回気候変動枠組み条約締結国会議(COP16)が開かれている。COP15に次いで、大きな成果は期待できない情勢だが、そもそも京都議定書やポスト京都の枠組みを巡る議論はさまざまな誤解や矛盾をはらんでいる。立命館大学政策科学部の周イ生教授(イは、王へんに「偉」のつくり)に、ポスト京都を巡る中国の役割を中心に、緊急寄稿して頂いた。
■中国は05年比40~45%削減目標を公表
京都議定書は2008年から2012年までを第1約束期間とし、その後も第2、第3約束期間と継続することを前提として採択された。
京都議定書に定めのない第二約束期間である2013年以降の地球温暖化対策(いわゆるポスト京都の枠組み)の交渉は、京都議定書のもとに特別作業部会(AWG)が設置されて2005年から開始し、2009年12月、デンマークのコペンハーゲンで行われたCOP15でその最終合意を目指した。
しかし「コペンハーゲン合意」は全会一致での採択を断念し、同合意に「留意する」との法的拘束力のない決議にとどまり、先進国と新興国側との溝の深さを浮き彫りにする形となった。
ポスト京都の枠組みをめぐって、世界最大級の二酸化炭素(CO2)累積排出国で、世界最大の経済力をもち、かつ技術的政治的腕力のあるリーダー国にふさわしい行動を米国にどうとらせるかはともかくとして、単年度のCO2排出量が世界一レベルで、かつ最大な途上国である中国をどう関与させるかは、ポスト京都枠組みの焦点の一つである。
中国の胡錦濤国家主席は、2009年9月22日の国連気候変動サミットでの演説で、2020年までに全エネルギー消費に占める非化石エネルギー(水力を除く)の割合を15%に高め、CO2排出量を2020年までに国内総生産(GDP)比で05年の水準より著しく減らす方針を示した。
さらに、2009年11月26日に、中国政府はその方針を具体化した数値目標として、2020年までにGDP当たりCO2排出量を05年比40~45%削減を公表し、またCOP15にいては、中国温家宝総理が国内の法的約束力ある自主目標として公約した。
ここでは、気候変動問題における国際合意を踏まえ、中国の気候枠組みにおける位置づけと基本課題などの分析を行い、ポスト京都を巡る中国の動きと今後の見通しを分析し、中国の今後の気候対策のあり方について提言する。
■「ポスト京都」は京都議定書の「終了」か
ポスト京都の枠組みを議論する場合、よく出てくるいくつかの「誤解」を解くことが必要である。
人類史上始めてCO2の排出削減を法的な義務とした国際法である京都議定書は2008年から2012年までを第1約束期間とし、その後も第2、第3約束期間と継続することを前提として採択されたものだ。
第1 約束期間が終了したからといって失効するものではない。その第2約束期間、すなわち、2013年以降の枠組についての交渉が、京都議定書のもとに特別作業部会(AWG)が設置されて交渉を開始していた。
2007年12月にインドネシア・バリ島で開催された気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)と京都議定書第3回締約国会議(COPMOP3)で、米国と中国など主要途上国も含む次期目標を2009年末までに合意することとし、条約のもとにも特別作業部会が設置され、交渉を開始することとなった。
2013年で京都議定書は当然のように終了するものではなく、第2約束期間がスタートするだけであり、第2約束期間は京都議定書のトラック (軌道) の拡充が基本となり、議定書は長期的に有効な法的文書である。