環境に配慮して割り箸の使用を控える人が多い。しかし今、割り箸の使用が森を守るとして、その役割を見直す動きが広がりつつある。割り箸は森林破壊に直結しないばかりか、むしろ木材資源の有効活用であり、特に国産材を使った割り箸については使った方がよいという認識が出てきているのだ。
奈良県庁の食堂では今年11月、樹脂箸をやめ、地元吉野産のヒノキの割り箸を置くようになった。県内の林業の活性化が目的だという。また、大学の食堂などに1998年から国産間伐材の割り箸を導入してきたNPO法人 樹恩ネットワークでは、今年に入って生産拠点を3ヶ所から7ヶ所に増やし需要増に応える体制を整えた。
2009年に発足したワリバシカンパニー(岐阜県高山市)は、2011年春から国産間伐材の割り箸「和RE箸(ワリバシ)」(写真)の生産を始める。各地で「ただしい森づくり」などを推進する一般社団法人more trees(モア・トゥリーズ)の認証付きで販売し、使用後は回収して粉砕して「おがこ」に加工する計画だ。おがこは畜産農家で畜舎の床に敷くなどして活用し、最後には堆肥にして有機野菜を育てることを目指す。
国産材割り箸を推進する背景には、林業の危機がある。戦後、日本の山には政策として大量のスギが植林された。ところがその後、木材自給率は低迷した。2000年を底に回復傾向にあるが、林野庁の調べによると2009年も27.8%にとどまっている。利用されず、資金と人手不足で間伐(間引き)が進まなかった山には、小径木(細い木)が多い。
国産材割り箸の需要が増せば、使い途がなく廃棄されていた間伐材、小径木、背板(丸太から角材を取った残り)などを商品化でき、日本の林業に収益をもたらすとみられる。
割り箸が森林を破壊するのではという懸念は根強い。しかし森林ジャーナリストの田中淳夫氏は「割り箸は、それほど木を必要としない。今は日本の割り箸の大部分が中国産だが、その木材量は、中国の木材消費量の0.1%未満。割り箸を森林破壊と結び付けるのは大げさだ」と明快に否定する。
林野庁が2009年に発表した「森林・林業再生プラン ~コンクリート社会から木の社会へ」は、10年後までに木材自給率を50%以上に引き上げる目標を掲げた。かつて100%自給していた割り箸についても、国産材の巻き返しが始まろうとしている。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)2010年12月16日