
増え過ぎたシカが、各地の山や畑を荒らしている。一方、山で駆除した害獣は運びにくく、埋められたり放置されたり燃やされたりしている。これらの解決策の1つが、ジビエ(狩猟鳥獣)料理だ。
ジビエ(仏:gibier)はフランス料理の用語で、狩猟鳥獣を指す。最近、ジビエを活用する取り組みが活発化している。2010年末、JR東京駅構内の「ニッポンの駅弁」の店頭に、鹿肉を使った信州ジビエ弁当が加わった。商品化に協力したのは、ジビエ料理を得意とするフランス料理店「オーベルジュエスポワール」(長野県茅野市)の藤木徳彦シェフである。
藤木シェフは、2011年1月下旬に農林水産省の食堂でジビエを使った期間限定メニューを提供。また、ごはんミュージアム(東京国際フォーラム内)で同月に開催された日本農業新聞主催「野生獣肉利用活用セミナー」では、参加者の目の前でシカを解体して料理した。
2月15日には、秋葉原のUDXオープンカレッジ主催「ジビエ(狩猟鳥獣)と料理による環境対策」に参加。農林水産省食品産業振興課の植村悌明(うえむら ともあき)課長らと共に、パネリストとして登壇した。メイドカフェなど秋葉原の飲食店の店員も招かれた会場では、藤木シェフによるシカ肉やクマ肉の料理に「全然くさくない」「思った以上に、おいしい」と感嘆の声が上がった。
シカ、イノシシ、サル、カラスなど野生鳥獣による2009年度の農作物の被害総額は213億円に上る。中でもシカによる害が増加傾向にある。シカは人の背丈程度の電柵なら簡単に飛び越える。畑では野菜の葉を、山では植林した苗や育った木の皮を食べ、枯らせてしまう。
北海道ではエゾシカが急増している。道庁の調べによると、2009年度に狩猟と駆除で捕獲したのは合計約9万2千頭。そのうち、ハンターの自家消費を除き、食肉として処理されたのは約1万2千頭に過ぎない。
藤木シェフは「国産の新鮮な山の幸を、誰もが気軽に味わえる仕組みづくりが必要だ。法制度や流通ルートの整備が待たれる」と語った。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)2011年2月18日