オルタナ12号(2009年3月発売)

オルタナNo.12 Mar 2009第一特集

ソーシャルなお金の貸し方

「志」のお金で社会や地域を変える
社会性が高い事業を行う企業やNPOに融資する「ソーシャル・ファイナンス」が脚光を浴びている。貸し手の多くは大手の金融機関ではなく、有志から出資を募り、お金の流れで社会を変えようとするソーシャル・バンカーたちだ。その姿を追うと、貸し手と借り手が顔を付き合わせ、二人三脚で事業を発展させていくという、金融業の原点とも言える姿が浮き彫りになった。この流れをさらに広めるには、何が必要なのか。

オルタナパーソン
小林武史 ap bank代表理事]

ap bank、「貸す」から「育てる」へ

「ソーシャル・ファイナンス」最大手の一つ、ap bankが、業務開始から5年を経て第二段階に踏み込む。単なる「融資」から、経営指導や市場調査など企業を「育てる」方向に舵を切るのだ。陣頭指揮を執る小林武史プロデューサーにその戦略を聞いた。

第二特集

ポスト京都、本当のヤマ場は6月

昨年12月、ポーランド・ポズナニで開かれた国連気候変動枠組み条約第14回締約国会議(COP14)は、温暖化問題の国際交渉の混迷を象徴するような経緯をたどった。結局は何も決まらなかったのだ。「12月にコペンハーゲンで開く『COP15』までに決めれば良い」とうそぶく関係者も多いが、実はそんなに時間は残されていない。新議定書の本当のリミットは今年6月だ。

第三特集
「廃品」を商品に変える発想

古タイヤがバッグに、廃材が家具に
ナイキはゴミからシューズ
「廃品」を商品に変えるという新しい発想のビジネスが注目されている。ペットボトルのような回収・リサイクルではなく、廃材そのものに価値を見出して商品化し、環境や社会問題に関心が高い層を中心に訴求する。もちろん単なる廃品利用で売れるわけはなく、各社とも「カッコ良さ」をアピールするためセンスを競っている。

photo gallery
退屈な結婚式は平和の序章
civilization
オルタナティブ文明論 田坂広志 CSRと社会起業家が、資本主義を進化させる

第4回と第5回では、ウェブ革命が、「ボランタリー経済」を復活させ、次いで、ボランタリー経済とマネタリー経済が融合した「新たな経済原理」を誕生させていくことを述べた。この新たな経済原理は、「ハイブリッド経済」(融合経済)と呼ぶべきものであるが、では、それは、ウェブの世界にだけ生まれているものか。

alt keyword
プロボノほか

弁護士の世界に、プロボノ(pro bono)という言葉がある。原義はラテン語で「善のため」という意味。無報酬または低報酬で行う、公共的・共益的な弁護士活動を指す。具体的には社会的弱者のために行う無料の法律相談や弁護活動がこれに当たる。

business wave
家庭でおいしい産みたて卵を

卵は買って食べるもの。そんな固定観念をくつがえすサービスが、オーストラリア・シドニーにある。鶏と小屋をセットにして販売するもので、自然志向の人々に徐々に広まっている。小屋が置ける庭さえあれば、誰でも自宅で鶏を飼うことができる。とびきりおいしい卵を産み、庭の雑草を食べてくれる鶏は、実はお得なのだ。

green media
greenz.jp SNSでエコ活動を始めよう

いまや世界中に張り巡らされている、インターネットの網の目。そしてそのチカラを使って、地球の裏側の人とも協力し、サステナブルな活動を楽しめるサービスが、多く登場している。

Green TV Japan 消え行く日本の知恵びと

「森の"聞き書き甲子園"」。それは毎年、日本全国から選ばれた100人の高校生達が100人の森に関わる名手・名人の元を訪れ、一対一の対話を通じてその知恵や技術、そして人生そのものを聞き、その方の「話し言葉」だけで文章をまとめる「聞き書き」という手法で、日本の伝統を伝える取り組みである。

CSR1
CSRトピックス ホッカイロで身も心も温かく ほか

白元は、「ホッカイロ」で「世界の子どもたちに温もりを届ける」をテーマに、05年からスタートした「ホッカイロWarmHeartキャンペーン」を今年度も08年8月から09年7月まで実施している。

CSR2
環境・CSRリレートーク ソニーCSR部 シッピー 光さん 半世紀にわたる次世代育成の志で

ソニーの「次世代育成」を中心にした社会貢献活動に8年前から携わるようになったのは、英国の大学院で国際開発を学び、東京の民間助成財団でNGO支援に携わった後、より教育支援に関わりたいと思うようになったからでした。当時の企業の社会貢献活動は、NPOの呼びかけに応えたり、寄付が中心で、受け身の傾向が強かった記憶があります。そんな中、若手社員で勉強会を開き、本業を活かした活動を行っている企業や、NPOとの協働事例について議論を重ね、弊社にしかできない活動を模索してきました。

私のエコひいき オルタナ編集委員 奥田みのり  提案「グリーン・リテラシー」

「環境にやさしい」や「温暖化防止」が身近な話題になるのはうれしいが、何にでも「グリーン」と付けることに暴走していないか。

CSR3
もう一つのブランド論 阪本啓一 「不完全」から着想する

現在、食にまつわるビジネスに携わっている人は皆、ピリピリしている。あるメーカーでは役員氏が全社員を集めて「1㍉のスキマもなく安全に留意せよ」とマイクを飛ばさんばかりに叫んだ。製造ラインは何重にも「異物混入」のないように設計され、「万が一」のないよう手が打たれている。異物混入の確率はμ(ミクロン)の世界という。にもかかわらず、先週は虫が入っていたとクレームを言ってくる人が出た。このようなクレーム電話が一本入るだけで職場は止まってしまう。業務もさることながら、マインドが止まる、委縮するのである。

CSR経営論 坂本文武 不況だからこそのCSR

CSR関連部署の予算は軒並み削減されているが、「不況でCSRどころではない」ではなく、「不況だからこそCSRに取り組む」発想を持ってはいかがだろうか。

CSR4 ジョン・ウッドからの手紙
ルーム・トゥ・リードCEO 500円が現地語の本5冊に

私は冬の東京が大好きです。昨年12月に来日し、イタリア大使公邸を皮切りに、アカデミーヒルズ、インスティテュート・オブ・ストラテジック・リーダーシップ、松屋銀座店で講演を行い、4日間で延べ600名の方々にお会いすることができました。

エコのご意見番
木内孝 「自然の法則」に従う

「人間は放って置くと7つの罪を犯す」といわれます。原則なき政治、人格なき教育、道徳なき商売、労働なき富、人間性なき科学、良心なき快楽、犠牲なき宗教です。何か身につまされませんか。

NPO1
NPOフロンティア 原田勝広 進化著しい「NPOと企業の協働」

CSR(企業の社会的責任)が定着し、NPOと企業の協働も質の高い真のパートナーシップが実現しつつある。といっても協働を難しく考えることはない。リソース(資源)は意外に身近にころがっているものだ。例えば存続が危ぶまれかねないような地方のローカル電車。新幹線ほど華やかではないし、都会の通勤電車のように便利でもない。それが街おこしのツールになるのだ。

NPO2
ゴスペル歌ってアジアの奨学金 ほか

NGOゴスペル広場は、2月に神奈川県横浜市と三重県内3カ所で「サニーサイド・ゴスペル・クラブ」をスタートさせた。

news scramble
女性の働き方を考えるシンポ ほか

国際女性デーにあたる3月8日(日)に、女性起業家の有志が「未来の元気宣言!」という女性の働き方を考えるイベントを、女性と仕事の未来館(東京・港区)で開催する。

reportage ハングリー・フォー・ミッション
ゆるかも かものはしプロジェクトを支える!

「カンボジアの児童買春を無くす」というミッションで活動しているNPO法人「かものはしプロジェクト」を、イベント運営などを通じて後方支援している若者たちがいる。「ゆるやかな国際協力初心者団体」と名乗る彼らの活動とは。

alternative politics
「ジェネレーションの対立」を予感

日本の政治がかつてないほどの閉塞感に包まれている。首相が2代続けてその座を放り出し、その次の首相も国民の支持を失った。米国で初の黒人大統領が就任し、「CHANGE」を旗印にしているのとは好対照だ。そんな状況に業を煮やしたのか、このところ「政治を変えよう」という若者たちが増えてきた。政治と若者を、改めて見つめ直す。

environment1 ニュースエッジ
米 緑の雇用420万人規模に ほか

米国の環境関連産業の雇用数は、今後30年間のうちに420万人規模まで増加する見込みであることが米国市町村協議会から発表された。予想される雇用の数が明らかになったのは初めて。

environment2
藤井教授の環境金融論 上智大学大学院教授 「環境金融・オブ・ザ・イヤー2008」は?

「環境金融」の言葉があちこちで語られるようになってきた。2008年7月に政府が閣議決定した「低炭素社会づくり行動計画」の中で使われ、「政府認定を受けた」と喜んでいたら、08年末のエコプロダクツ展でも、元国連大学副学長の安井至先生が「環境金融」に言及していた。

environment3
オルタナティブな空間 馬場正尊 「新しい郊外」の家

昨年末、僕が房総の海辺に建てていた「房総の馬場家」(すなわち自宅)が竣工した。このプロセスは、僕の環境や身体に対する、ここ数年の意識の変化そのものだ。なぜ房総に土地を買い、住み始めようと思ったのか。

food&health1
KIYOの哲学 実践編 南清貴/井上敬 料理の腕前は政治手腕 中華料理と究食

人品骨柄はどうあれ、国の最高権力者である総理大臣のことを「宰相」と呼ぶが、これは元々古代中国で、天子を補佐して政務を処理する最高の官のことをそう呼んだことに端を発する。

food&health2
グリーングルメガイドオーガニックカフェ璃5U 喧騒を逃れ、自然の恵みに癒される

東京・代官山から八幡通りを通って、渋谷へ向かう途中の小道を入った角にあるオーガニックカフェ「璃唵(りおん)」。大きなガラス戸から入る自然光と風の通る大きな窓から見える木々。アジアンテイストでまとめられたインテリア、それぞれのテーブルにさりげなく飾られた可憐な花は、訪れた人々の気持ちをほっと和ませてくれる。

culture
Movie「彼女の名はサビーヌ」古賀重樹 自閉症のケア、切実な訴え

物書きは物を書き、映画作家は映画を作る。どうしてもこれを伝えたい、伝えなくてはという欲求と使命感があるからだ。そんな欲求や使命感などなくとも、文章は書けるし、映像は撮れるが、やむにやまれぬ気持ちなしに、人の心は打てない。

Book 「日本でいちばん大切にしたい会社」 経営者は社員の幸せを追求せよ

会社経営とは、社員とその家族、外注先・下請企業の社員、顧客、地域社会、株主を幸せにする活動です。そして、顧客や株主の幸せの前に、従業員とその家族の幸せを優先するべきです。感動する商品をつくるのは従業員ですから、彼らが会社に大切にされていなければ、心のこもった商品やサービスは生れません。株主の満足度は、他の四つの満足度が高ければ、結果として実現します。これを忘れた経営者が多すぎます。

dialogue エゴからエコへ
田口ランディ 冬は、根を張る季節

一日の大半を、仕事場で一人で過ごす。やることと言えばパソコンに向かって原稿を書くだけ。好きで仕事にしているのだから文句はないが、やはり飽きる。自分で昼飯を作るのが唯一の楽しみである。

alterna select
ケニア フェアトレードのバラ 花束を贈って地域支援 ほか

FLO(国際フェアトレードラベル機構)の認証を受けるこのバラの花束は、茎がしっかりとした高品質。1束購入する毎に約12円が奨励金としてケニアの地域発展に使われている。

shop
一貨店礼賛 時代を超えた温もり、メカも写真も

東京・浅草。昭和の面影を残す雷門通り商店街にある「早田カメラ」は、クラシックカメラ愛好家で知らぬ者のいない、マニアックなこだわりの店である。

design
ディグニティ・トイレット 携帯トイレが命を救う

庭にトイレ設備のない人たちが、世界には26億人もいるという。彼らのトイレは野原や線路、プラスチックバックなど。排泄物で汚染された水は、コレラなどの病気を引き起こし、多くの子どもを死に追いやっている。

leisure
東京ポタリング 山本修二 清々しい日曜は皇居をぐるりと

日曜の朝、皇居周辺は平日とはまるで違う静けさに包まれていた。ランナーたちの暗黙のルールに従い、半蔵門から左回りに周囲約5㌔㍍を自転車で走った。キラキラと輝く壕の水辺には水鳥の姿もみえる。緑豊かな皇居の敷地、その向こうに丸の内のビル群を望みながら、ゆるい下り坂を軽快に行く。普段は、ぎっしりと列をなすクルマも日曜の朝はまばら。だから空気が清々しい。

travel
パタゴニア大自然紀行 マゼランペンギンの営巣地

パタゴニア北部、アルゼンチンのバルデス半島は動物の宝庫だ。陸地部分は荒野だが、付近の海域は暖流と寒流がぶつかり、プランクトンが増加して魚群も集まってくる。そのためペンギン、アザラシ、多種の海鳥が見られる名所になっている。バルデス半島は世界自然遺産にも登録されており、多くの観光客が訪れる。

ambassadors
オルタナの輪 株主からの情報発信

車椅子に乗った社会派アスリート
昨年10月、四肢に障害を持ちながら東京~福岡1200㌔を10日間で走破した永野明さん(33歳)は、バリアフリーや食育、温暖化防止など、社会問題の解決に精力的に取り組む「社会派アスリート」だ。

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