「上関原発と高江ヘリパッドは『愛知ターゲット』の実現を阻む」――。生物多様性条約市民ネットワーク(CBD市民ネット)は3月10日正午、参議院議員会館で集会を開き、70人が参加した。昨年10月に名古屋でCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)を開催した日本は、次回のCOP11まで議長国を務める。生物多様性保全のための行動を定めた「愛知ターゲット」を率先する立場にありながら、政府は上関と高江で進む開発を見過ごして良いのか、という問題提起だ。
■上関と高江から現地報告
集会では各現地からの報告が行われた。映画監督の鎌仲ひとみ氏は中国電力による上関原子力発電所(山口県上関町)の建設工事について、2月21日未明から工事が再開されたことに触れて「建設予定地の海は瀬戸内海で最後に残された生物多様性の宝庫」と指摘した。
その上で「過去、日本中の生物多様性のホットスポットが、経済性だけを基準に破壊されてきた。工事を一旦中止し、環境アセスメントの再実施やエネルギー政策の見直しなどを行いながら計画の是非を議論する『モラトリアム・カミノセキ』が必要。これまで日本中で生物多様性が失われてきたが、上関は過去を見直すターニングポイントだ」と語った。
続いて、沖縄県東村の高江集落に隣接する「やんばるの森」で進められる米海兵隊用ヘリパッドの建設計画で、沖縄防衛局が1月11日から樹木の伐採や砂利の搬入などを強行していることについて、「ヘリパッドいらない住民の会」の比嘉真人氏が発言。「作業内容も知らない若者が建設に動員され、戦争を体験した老人の説得に『うるさい』とツバを吐きかける。同じ日本人同士が対立する現状に地元の人々は涙を流している。日米合意だからではなく、本当に必要なのかを立ち止まって考えてほしい」と訴えた。
■COP10議長国として率先して行動を
この集会でCBD市民ネットは、生物多様性の保全のために国際社会が2020年までに実効性ある緊急行動を起こすよう求めた「愛知ターゲット」の実現のため、上関と高江での工事の即刻中止や、政府に対して率先して行動することなどを求める緊急声明を発表した。
CBD市民ネットの原野好正運営委員は「日本はCOP10議長国として、採択された愛知ターゲットや、昨年12月に決議された『国連生物多様性の10年』を率先して世界に広める責任がある。しかし現実には、これらに関係のある環境省や外務省は上関や高江をめぐっては動かずにダンマリを決め込む。これらの関係機関は経産省や防衛省に意見書を提出するなど、積極的に動くべきだ」と話した。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年3月10日