【ドイツ=田口理穂】ドイツのメディアは、東日本大震災で発生した原発事故に関して「福島の原子力発電所がいったいどういう状況であるのか、はっきりした情報がない」と批判。あいまいな報告ばかりでチェルノブイリのソ連政府と変わらない、チェルノブイリから何も学んでいないと指摘している。
ドイツはヨーロッパの中で、最も反原発運動が盛んだ。チェルノブイリで恐怖を味わったこともある。シュトットゥガルトでは12日、二つの原発の間を6万人が距離45キロにわたり人間の鎖を作った。他都市でも数百人規模のデモが実施され、東日本大震災の犠牲者に思いをはせた。
ドイツでは2000年の前政権(社会民主党と緑の党)のときに2021年までに原発から脱却することを決めたが、現政権(キリスト教民主同盟と自由民主党)が昨年、稼動期間延長を決めたばかり。国内で稼動中の17基を平均12年延ばす案に、野党は大反対したが通ってしまった。これを機に、脱原発を反故にするのではないかと危惧する声も高かった。2020年には電力の30%を再生可能エネルギーでまかなうことを決めているが、実現は厳しいという声もあがっている。
しかし今回の事故により風向きは変わりつつある。ノーベルト・レットゲン環境相はテレビ番組で「日本は原発に高レベルの安全対策を施し、地震の危険についても理解していたはずなのに、このような事故が起きた。とても深刻な事態だ」とし、「この事態で危機管理について根本的に見直すことになった」と話した。
またアンゲラ・メルケル首相は、ドイツ原発の安全基準について審査をすると予告した。(ユナイテッド・フィーチャー・プレス)