【ドイツ=田中聖香】今回の震災に関する日本政府の情報公開姿勢について、原発議論で進んだドイツを中心に、欧州メディアでの批判が高まっている。
独・ニュース専門局のn-tvでは、原子炉建物の爆発、燃料棒露出、炉心溶融の可能性などについてキャスターが「表向きの説明では」と繰り返し報道。また、1号機の建物爆発についてグリーンピース関係者の談話として「コンクリートの屋根が吹っ飛ぶほどの破壊力なのに、圧力容器や格納容器が破損していないはずがない」といった談話も紹介している。
14日付けの『ライニッシェ・ポスト』紙ではページの約3分の1を割き、「情報公開をケチる日本政府」と題した記事を掲載。
同紙のゴーデハルト・ウーレマン記者は、「この未曾有の被害と原発事故のリスクに直面していながら、日本政府の情報公開はまったく不十分」、「管首相は国民に対し節電や省エネを奨励しているが、こうした指示は状況を説明するものではなく、国民を不安にさせるだけ」、
「破壊された発電所の運営会社は、事故以前にも不十分かつ虚偽の説明をして批判されたことがあり、今回も情報が操作されている可能性がある。こうした劇的な状況にあってはなおさら、発表の信憑性が疑われるばかりだ」と厳しく批判している。
一方、南ドイツ新聞(オンライン版)では14日、ミヒャエル・ケーニッヒ記者が、政府発表と事実の齟齬を時系列でリストアップした。それによると、「地震発生の75分後に管首相が初めて会見したとき、『原子炉は自動的に停止し、危険はない』と発表したが、その直後に付近の住民を避難させ、1号機の建物爆発後には、記者会見まで5時間もかかった上で、大量の放射線がもれている可能性はないと話した。だが深夜には発電所近くでかなり高い値の放射線値が確認された」と指摘。
さらに、「2号機の燃料棒が露出していること、3基で炉心溶融の可能性があることは、東京電力と共同通信が先に発表し、政府はこれを追認するだけだった」と列挙する。その上で、「こうした日本政府の対応に、チェルノブイリ原発事故後の当時のソ連政府を思い出す人は少なくないだろう」と結んでいる。(ユナイテッド・フィーチャー・プレス)