財界と電力企業、なおも原発に執着か

3月11日に発生した東日本大震災から1週間がたつ。この戦後最大の震災が過去と全く異なるのは「原発震災」である点だ。地震と津波で被害を受けた東京電力福島第一原発では、爆発や放射性物質の飛散が発生。被災地で同原発の立地県である福島県を初めとして、日本全体を大きな不安に陥れている。しかし財界や電力企業はこうした国民の不安と向き合うどころか、事態沈静化以降の原子力発電の巻き返しを虎視眈々とうかがっているようだ。

■事故後に広告「核燃料サイクル推進を」

東京電力の原発広告が掲載された「週刊朝日」表紙

「原発は千年に一度の津波に耐え素晴らしい。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」――。17日に報じられた日本経団連の米倉弘昌会長の発言に、ネット上では「耐えていれば避難などしなかった」「事態はまだ悪化の一途なのに」などと怒りの声が渦巻いた。

現場で被害拡大を食い止める東京電力社員を米倉会長は擁護したかったのか。しかし、とりわけ国や東京電力からの情報が乏しい中で復旧活動を強いられる福島県や、半径30キロメートルの避難地域に市域の大半が重なる南相馬市にとって、この発言は到底受け入れられないだろう。

その東京電力は、東日本大震災を特集した今週の「週刊朝日」に「原子燃料リサイクルの勧め」と題した1ページの広告を掲載。核燃料にプルトニウムを混ぜるプルサーマル計画の必要性を謳う内容だが、14日に爆発とともに黒煙を噴き上げた福島第一原発3号炉がプルサーマル発電中だったことを伝える報道は少ない。

■原子力政策に執着

電力会社の無神経ぶりはこれだけではない。16日に上関原発工事の中断を発表した中国電力は、18日現在も発破を伴う現地作業を継続。「国による安全審査の一環」と同社は説明するが、福島での原発事故は国の原子力安全政策そのものを根底からくつがえすのは必至だ。従来の安全基準の延長線上にある上関原発計画は、調査も含めて一時凍結するのが妥当だろう。

こうした振る舞いの先に見えるのは、一連の事態が沈静化して以降、事故で大きく損なわれた原子力発電への信頼回復を図り、巻き返しを狙う財界や電力企業の姿だ。日本商工会議所の岡村正会頭も16日に「原発の建設基準の向上を」と語り、エネルギー供給の一定の割合を原発に依存するしかないとの考えを示した。

ここに大量消費への反省や、自然エネルギーの導入拡大への強い意志などは見られない。あるのは、安全神話が崩壊し、破綻へと至った原子力政策への執着だけだ。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年3月18日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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