東北地方では、この連休も場所によっては雪が舞っている。東日本大震災の被災者が直面している寒さを少しでも和らげるため、日本カイロ工業会(東京都中央区)は18日までに75万個の使い捨てカイロを経済産業省に引き渡した。
カイロなどの支援物資は、経産省と緊急災害対策本部(首相官邸)を通じて、現地の災害対策本部へと送られる。大震災が発生した3月11日の夜、使い捨てカイロのメーカー18社が所属する同会に、経産省から電話が入った。被災地から支援物資としてカイロの要請があるという話だった。急きょ会員企業に連絡を取り、まずは第一弾としてロッテが「ホカロン」1万枚を提供。これは経産省を通して、間もなく現地に送り届けられた。
その後、同会は週明けの14日までに各所に呼び掛けて3000ケース計75万枚の使い捨てカイロを集めた。今シーズンのカイロの生産は既に終了している。これから新たに増産すると次に供給できるのは1カ月先となる。そこで、集められただけの量を担当省庁へ引き渡した。しかし、搬送に関する問題や、食糧が優先される事情などにより、まだ思うように被災地に届いていない。
カイロのほか、マッチも、被災地で薪やストーブやローソクに着火するときに役立つ。日本燐寸(マッチ)工業会の本部は、阪神大震災を経験した神戸にある。同会も、経産省からの要請があったら提供できるように待機している。
海江田経産相は17 日の記者会見で、被災地へのガソリンや軽油などの供給確保と輸送力強化を発表した。ストーブ燃料にもなる灯油については、ドラム缶約400本を20日までに自衛隊が搬入、その後1400本をトラックで陸路を使って搬入予定だ。また、無償提供された2000本の搬送先の調整も進めているという。
JX日鉱日石エネルギー(東京都千代田区)の仙台製油所は、地震で火災に見舞われた。15日に鎮火したばかりだが、機能回復を急ぎ、20日以降は1日約400本の灯油を出荷予定だ。これらの試みにより、被災地は深刻な燃料不足から徐々に脱しつつある。しかし、ガソリンや灯油が東北全域に行き渡り始めるのは、早くても被災後10日以上経った連休明けと見られる。
東北地方では、22日以降も最低気温が5℃を下回る厳しい冷え込みが予想されている。長引く避難生活で冷え切った体に、できるだけ早く、少しでも暖かさが届くことを、日本カイロ工業会をはじめ、多くの関係者が祈っている。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)2011年3月20日