生産者の生活を守りながら被災者へ温かい食事を届けようと、会津若松市でコメのブランディングと販売、地域の食のプロデュースなどを手がける会社が新しい仕組みを作った。同市に本社を置く有限会社「会津食のルネッサンス」だ。
同社は、義援金ではなく、「義援米」をおにぎりにして、地元の食材で作った温かい豚汁などとともに避難所へ届ける仕組みを作った。
被災者へおにぎりを寄付したい場合、定価の約4割引の価格で同社の義援米(5キログラム2500円)を購入できる。そのコメのすべてが90人分のおにぎりとしてにぎられ、被災者に届けられる。通常通りに定価でコメを購入した場合は、その10%相当が別途義援米として同社から寄付され、おにぎりとなる仕組みだ。
寄付された義援米は、地元の野菜や果物とともに、会津大大学生を中心としたボランティアの手によって調理される。同大学内や公民館などの調理室で、コメはおにぎりとなり、地元の食材が豚汁、カレー、ゆで卵などに調理され、温かい食事として被災者のもとへ届けられるのだ。会津地域に避難している被災者は約8000人に上るという。
同社代表の本田勝之助さんは、震災3日後から新潟県の自社拠点に全国から緊急に必要な物資を集め、そこから会津地域へ届けるという支援を始めた。
ところが、遠方から届けられる食品はレトルトやカップ麺などの保存食ばかり。「栄養面からも精神面からも、新鮮で温かい食事が必要だと強く感じた」という。
地元の農協、福島県会津地方振興局、会津若松市防災安全課と情報を共有しつつ、義援米という仕組みを作った。コメ以外の食材は農協が協力している。これなら新鮮だし、輸送距離が短いのでガソリンも少なくて済む。
一方、会津地域でも福島第一原発の風評被害が広がりつつあり、野菜や果物の生産者が安全な食材が量販店から出荷をキャンセルされる事態も。おにぎりは始まりに過ぎない。
長期間に及ぶ支援を見据え、生産者の生活と支援を両立させるべく、本田さんは今後この仕組みをコメ以外にも広げていきたいという。他の地域でも取り入れることができる新しい支援の形態だ。(たかせ藍沙)
有限会社 会津ルネッサンス http://www.keisyoumai.com