今回の福島原発事故で、東京電力に巨額の負担が課せられることが見込まれる。決算・財務情報から、東電の状況を分析したい。独占企業ゆえの健全な財務状況で即座の倒産の可能性はないものの、先行きの不透明さが残る。
東電は09年度連結で売上高5兆162億円、経常利益2043億円、純利益1337億円の巨額の黒字を確保した。同期末総資産も13兆2039億円ある。英紙フィナンシャルタイムズは3月29日付記事で、最大3兆6900億円の賠償支払いも可能と伝えた。
しかし今後は不透明だ。供給力不足でコスト高の火力発電をフル稼働させ、電力販売の落ち込みも重なる。またこれは国民生活にも影響を与える。普及が必要な自然エネルギーの送配電は既存の電力網を使うが、経営不振はその再編を遅らせかねない。また電力会社は原価を料金に転嫁できる。電力価格の上昇は経済と生活を圧迫するだろう。東電を切り捨てられないジレンマに全国民が直面している。(オルタナ編集部=石井孝明)2011年3月29日