「避難所にいることを忘れそう」と美味しい料理に笑顔がこぼれた。3月31日夕方、東京都が被災者を受け入れている施設のひとつ、足立区の東京武道館でプロの料理人たちによる炊き出しが行われた。
避難所生活を送る人たちに美味しい料理を届けたいと、2008年にミシュラン一つ星を獲得したこともある銀座の日本料理店「六雁」が発起人となり、六本木の「YAKITORI燃」や個人で参加した料理人が賛同して共同で行った炊き出しだ。食材を提供した東京シティ青果からは、翌日入社という新入社員17人も駆けつけた。
30日現在、同施設に身を寄せる被災者は282人。緊急受け入れが始まった翌19日から弁当が配られ、現在は1人1日2000円分のグルメカードが配布されていて近隣の飲食店での食事が可能となったが、夕食の炊き出しは初めて。
提供されたのは、深川めし、野菜の煮こごり、六雁特製マカロン、実之和元祖かれー麺、築地おいしいバナナなど。館内にアナウンスが流れると、あっという間に長い行列ができた。傍らでは有志のミュージシャンがギターの弾き語りで応援。なごやかな雰囲気の炊き出しとなった。
六雁の総料理長の秋山能久さんは「温かい食事もままならない被災地へも炊き出しに行きたいと思っています。料理人として、美味しい料理で少しでも皆さんを励ますことができたら」と話す。
課題も多い。東京から車に食材と調理器具、料理人を乗せて現地に行っても費用と時間がかかるわりに小規模な炊き出しとなってしまうからだ。受け入れ先との調整、食材提供先探し、移動・運搬の車両確保などを模索中という。料理人たちの熱い想いが1日も早く被災地に届くことを期待したい。(たかせ藍沙)2011年4月1日