会場の高円寺中央公園を埋め尽くし、路上にあふれる人の波。しかもその大多数は若者――。10日午後に1万5千人が参加した「反原発デモ」の特徴は、政党や労働組合の動員に全く依存しない、若者の自発的な参加が「原発いらない」のうねりを作り出したことだ。参加の呼びかけや現場の様子が、ネットを経由して一気に拡散したことも見逃せない。
■原発に不信感 ツイッターが活躍
参加者からは原子力発電への不信感がにじみ出る。保育園で給食を調理する若い女性は「食品への被ばくが報じられて、子どもたちに食べさせる明日の献立をどうしようかと不安になる。そして職員以上に親御さんが不安がっていた。たくさんの人を不安にさせる原発がある意味が分からない」と話す。一緒に参加した友人の男性は「家の外に出て(原発について)考えようと思った。自分に何ができるか考えながら、今日はここに来ている」。
そして会場やデモで掲げられたプラカードには「人災」「今まで無関心でごめんなさい」「俺、元東電下請け。仕事辞めました。女房よ許せ!」など、参加者の切実なメッセージが。従来の「組織動員」による生気のないデモとは決定的に異なる点だ。国や電力会社が唱え続けた「絶対の安全」が単なるウソに過ぎなかったことは、もはや誰の目からも覆い隠しようがない。
今回のデモではツイッターが大活躍。先の女性らも「参加の呼びかけがツイッターで回ってきた」。スマートフォンでデモの様子を撮影した男性はツイッターに画像を投稿すると「リツイートの数がすごい」と話す。また、デモはユーストリームでも同時中継された。
■リサイクル店主「原発は人の手に負えない」
今回のデモを呼びかけたのは、高円寺でリサイクル店などを営む「素人の乱」だ。5号店店主の松本哉(はじめ)氏はデモに先立ち「原発は危ない。反対する理由はそれだけで十分。日本中、同時多発行動で原発を止めよう」と訴えた。
デモで使う電気や燃料を自然エネルギーでまかなう試みも行われた。廃食油を回収して燃料にする「東京油田力」の染谷ゆみ氏も「発電機の燃料は天ぷら油。原発をやめて自然エネルギーにシフトしよう」とアピールする。
午後3時に出発したデモの最後尾が、解散場所のJR高円寺駅北口に到着したのは辺りがすっかり暗くなった夜7時頃。松本氏は「こちらの予想を大きく上回る規模で大成功。みんながここまで『原発は良くない』と考えているとは思わなかった」と振り返り、「原子力は人間に制御できるものじゃない。(福島原発事故を受けて)これで原発が止まらなかったら世の中は終わり」と話した。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年4月11日