「原発に頼らない安心できる社会へ」――。信用金庫の勇気ある意志表示が大きな反響を呼んでいる。品川区内に本店を構え、都内と神奈川県内に85店舗を展開する城南信用金庫は4月1日、東日本大震災にともなう東京電力福島第一原発事故を受けて「原子力への依存は地域社会にとっても危険が大きすぎる」として「脱原発宣言」を行った。15日現在、金融庁によれば「このような例は金融機関全体を見渡しても聞いたことがない」という。
■「原発と地域の発展は相容れない」
城南信用金庫では1日以降、ホームページに「原発に頼らない安心できる社会へ」と題した文書を掲載。その中で「東京電力福島原発事故は我が国の未来に重大な影響を与えている。今回の事故で、原子力は私たちに明るい未来を与えてくれるものではなく、一歩間違えば取り返しのつかない危険性を持ち、政府も企業も万全の体制を取らなかった」と明記し、こう訴える。
「原子力への依存はあまりにも危険性が大き過ぎる。地域金融機関として今できることは、省電力、省エネルギー、そして代替エネルギーの開発と利用に少しでも貢献することではないか」
同金庫の吉原毅理事長は、動画ニュースサイト「アワープラネット・ティービー」のインタビューで「信用金庫は地域の顧客を守り、地域を発展させるのが使命。ところが今回の事故では住民が退避するなかで、金融機関も地域を離れなければならない。その気持ちは痛いほど分かる」と心境を語る。
その上で決断に至った理由について「これまで安心して電力供給を受けていたが、福島の人々に迷惑をかけることになった。これまで原子力発電に関心を持たなかったことは非常に問題。一人の人間、企業として真剣に考えて態度をはっきり決めないと日本は大変なことになる」と語り、原発と地域の発展は相容れないとの考えを示した。
■都内避難者から感謝の電話も
吉原理事長は「原発への電力依存度は約3割。ならば3割節電すればその依存を減らすことができる」として「企業として原子力に頼るわけにはいかない。地道にできることを取り組むことで社会をより良くしたい」と訴える。同金庫では脱原発の取り組みとして徹底した節電および省電力設備の導入、LED照明への切り替えなど11項目の施策を発表。また、地域での省エネ設備の普及についても、金融を通じて積極支援するとしている。
今回の意志表明以降、同金庫には都内に避難した震災被災者から感謝の電話が寄せられているという。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年4月15日