ドイツでは、自然エネルギー源の最終エネルギー消費量に占める割合が、2000年には3.8%であったのが、2010年には11%に伸びている。電力分野だけを見れば、この割合は6.4%から17%にも増えている。こういったダイナミックな増産を根元で支えているのが、地域に密着して自然エネルギー事業を実現する会社や組合たちだ。熱や電気を自給する「バイオエネルギー村」も広がりつつある。
■2030年までに48万人に供給目指す
南ドイツ、ボーデン湖地方で活動するソーラーコンプレックス株式会社も、そのようなエネルギーサービス会社である。2000年に20人の地域住民が、3.75万ユーロを出し合って設立した。目標は、2030年までに人口48万人の同地方の熱と電力を、自然エネルギーにより供給することだ。設備の計画、建設、運転までを一貫して手がけ、扱う技術は太陽光発電、水力、風力、バイオマス各種、地域暖房と幅広い。
年分配利回り5%の同社の株は、「エコロジー的に有意義で、長期的に価値を保てる投資」として、地域の住民や中小企業から人気を集めている。2010年には株主数は700に、株式資本は500万ユーロ(約6億円)に増えた。これまでの自然エネルギー事業への投資額は7000万ユーロ(約84億円)に上る。それらの設備は、一年で約6000世帯分の電力消費に相当する電気2200万kW時と、暖房・給湯用の熱2500万kW時を生産している。
「(2030年までのエネルギー自立は)技術的、経済的には可能です。一番大きな障害は人間の頭です」と、同社の経営者であるベニ・ミュラーさんは語る。
このソーラーコンプレックス社が力を入れているのが「バイオエネルギー村」の普及だ。バイオマスを中心とした自然エネルギー源により、熱と電気を自給する農村のことで、ドイツには56村ある。同社でもこれまでに5村を実現しており、毎年2村のペースで増やす計画だ。
その1つが人口430人、100世帯の暮らすマウエンハイム村。2006年にバイオエネルギー村になった。きっかけは村の二軒の農家が、副収入源としてバイオガス発電を始めようとしたことだ。