福島第一原発から流出した放射性物質が、海水や海底から相次いで検出されている。日本海洋学会は、このほど「震災対応ワーキンググループ」を結成した。海の放射能汚染の現状把握と将来予測に、学会を挙げて取り組んでいる。
ワーキンググループには複数のサブグループが置かれた。例えば、最適な方法で広範囲の放射能測定を進める「モニタリング・グループ」や、放射性核種の海底も含めた鉛直分布や海流による拡散を追跡し予測する「モデリング・グループ」などがある。
モニタリングについては、文部科学省などによる従来の調査に加えて、大学など各組織の船の観測計画を調整し、より広域かつ精度の高い計測を目指す。モデリングについては、その長所と限界を踏まえつつ各種モデルを積極的に活用し、一般に公開する方針だ。
その他、全国に分散する計測器の能力や台数など計測器全般の状況を把握するグループや、いくつもの組織の計測データの互換性を高めるために測定方法の統一を図るグループなども立ち上げる予定である。
海洋の放射性物質の研究で用いられてきた計測方法を使えば、従来の調査で「不検出」とされてきたエリアでも、より正確な値を出せる。同学会では、1リットル当たり「ミリベクトル」の単位まで計り、詳細なデータを蓄積していく計画だ。
日本海洋学会は1941年に設立された国内屈指の歴史を持つ学会で、2011年1月時点で、全国の大学や公的機関などの海洋研究者1922人が所属している。同会の有志が4月14日に開催した「震災にともなう海洋汚染に関する相談会」には約100人の会員が集まり、そこでの提言を元に震災対応ワーキンググループが結成された。
花輪公雄会長(東北大学大学院理学研究科理学部教授)は、4月18日に今後の活動について、同会ホームページの「東日本大震災関連特設サイト」に声明を発表した。他組織との連携を進め、海洋汚染の実態把握を急いでいる。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)2011年5月9日
日本海洋学会 東日本大震災関連特設サイト
http://www.kaiyo-gakkai.jp/sinsai/