東京の料理人を主体とする「国境なき料理団」の被災地炊き出しが続いている。3月31日の東京武道館を皮切りに月に1、2度のペースで岩手、宮城の避難所をめぐり、避難民にプロの料理を味わってもらう取り組みだ。みな本業を持つ身。忙しい厨房を抜け出し、時には日帰りで炊き出しをすることもある。
ゴールデンウィークの5月4日。宮城県石巻市の住吉小学校には、ボランティアを含む20人近くの炊き出し隊が集まった。一行が東京を出発したのは前日の午前10時。渋滞のなかを12時間近く運転して現地に到着後、翌朝早々から炊き出しの準備を始めた。
この日のメニューは、こどもの日に合わせたクリームシチュー。避難所やその周辺から訪れた人たちおよそ300人分を配り、加えて東京から持参した柏餅、クルミパン、ちまき、こいのぼりの形をしたせんべいなども、一人ひとりに手渡した。
校庭で行われた餅つきを楽しみにして来た人も多く、炊き出しの3時間前から学校で待っていたという安部優美香ちゃん(11)は、「自分でついた餅を食べるのが楽しみ」と、子供用のミニ杵を持って夢中で餅つきをしていた。
調理したシェフの榎園豊治さん、秋山能久さん、本道佳子さんは、それぞれ都内の飲食店で働く料理人。榎園さん、秋山さんは、銀座の日本料理店として高い評価を得ている「六雁」のそれぞれ支配人と料理長。本道さんは、ニューヨークで料理修行をした後、文京区に野菜料理を中心とした湯島食堂を開いた。
3人で「被災した人たちに料理人として貢献できないか」と話し合い、国境なき料理団を結成することになった。「店が終わって寝るのが毎日午前3時ごろ。朝6時には築地に行く」(秋山さん)というハードな生活にも関わらず、本業の傍ら被災地へ出かける。
時には1000食分を作る炊き出しには、食材、物資、移動などで数十万円の資金が必要。このため、継続的に続けるためには支援者と周囲からの理解が不可欠だ。
今回はNPO法人ゆいめどから食材費の補助を受け、仕事仲間から柏餅やちまきなどの提供を受けた。物資やボランティアを乗せる車両2台は、メルセデス・ベンツ日本から借り受け、同時にベンツの名前が入ったミニカー、ノート、ボールペンなど大量の支援物資を配った。
国境なき料理団では、今後も被災地での炊き出しを続けるために、支援を呼びかけている。(形山 昌由)
国境なき料理団事務局(湯島食堂)