与謝野「東電原発事故は神の仕業」

【写真】左:津波に襲われる福島第一原発 右:与謝野経財相(東京電力広報資料/Wikimedia Commons.)

東日本大震災にともなう東京電力福島第一原発事故以来、繰り返し国の原子力政策と東京電力を擁護する発言を繰り返している与謝野馨経済財政担当大臣の口から、再び聞く者をあぜんとさせる言葉が飛び出した。時事通信によれば、20日午前の閣議後の会見で福島第一原発事故について「神様の仕業としか説明できない」と語ったというのだ。

日本原子力発電出身の与謝野氏は、長年経産省とタッグを組んで原子力発電を推進してきた張本人だ。しかし当事者意識のかけらさえないこの失言に、ツイッター上では「神様のせいにできるなら政治家はいらない」「こんな大臣、今日中に解任しないと内閣が持たない」などの意見が流れている。

東電福島第一原発事故は限りなく人災だ。共産党の吉井英勝衆議院議員は2006年3月の時点で、日本の原発が津波で予備電源を喪失する可能性があることを国会で指摘。そして事故発生後の3月22日、斑目春樹原子力安全委員長は電源喪失などの非常事態への想定が甘かったことを国会で認め「割り切らなければ(原発の)設計はできないが、割り切り方が正しくなかったと反省している」と謝罪した。

ちなみに斑目氏が国会で謝罪した同じ日に与謝野氏は「原発は必要。火山帯の上に乗る日本は地震が多いという運命を避けがたい」との発言を行い、批判を浴びている。しかし地震国という認識に立つならば、最悪の事態を踏まえ、政府と電力会社が取るべき対策の余地はあったのだ。与謝野氏は今回の会見で「人間としては最高の知恵を働かせたと思っている」とも語ったが、原子力政策に責任のある国務大臣の発言としては、余りに軽すぎる。

もし仮に、日本の原子力政策が利益ではなく安全に忠実であり、想定される重大事態に対して考えうる対策を尽くしていたならば、福島第一原発で起きたメルトダウン=「原発震災」は回避できた可能性が高い。原発容認論者にとっても、震災を機に「巨大地震にも耐えた日本の原発」として海外への販路が期待できたはずだ。

国民への説明に神様を持ち出すしかない「日本原子力村」の終焉が迫っているのか。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年5月20日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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