石の紙「ストーンペーパー」は、引っ張っても簡単には破けず、水にも強い。この特徴を生かした雑貨を企画販売するイーリンクス(東京都品川区)は、ストーンペーパーの被災地での活用を提案している。大地震を経験した被災者が安心して花を飾れるよう、割れない「KABIN(カビン)」などを希望に応じて寄付する予定だ。
「KABIN」は、1枚のストーンペーパーで作られた一輪挿しである。折り畳めるので場所を取らず、開いて少し形を整えれば、すぐに使える。国産間伐材のバッグ「monacca(モナッカ)」で知られるプロダクツデザイナー島村卓実氏と同社のコラボ商品だ。
同社が使っているのは、TBM(東京都港区)が台湾から輸入して2008年から日本で販売しているストーンペーパー「Keeplus(キープラス)」。紙の約8割が石灰石で出来ている。粉末にした石灰石をプラスチック樹脂(ポリエチレン)と混ぜて成形する。製造に水が不要で、漂白の必要がなく廃水も出ない。価格は、石油由来の耐水紙よりも安い。
石灰石は資源量も豊富で、日本は約250億トンが採掘可能と見られている。廃棄後は燃えるごみとして処理されるが、台湾では、分別回収して再びストーンペーパーに加工する試みも始まっている。
日本では主に名刺やカタログや紙袋などビジネス用途で使われてきた。イーリンクスは、花瓶やランチョンマットやコースターなど、消費者向けの商品化を進めている。都内で開催された平和祈念イベントの「Peace Hiroshima 8・6 Park 2010」には、1000枚を超えるストーンペーパーの折り紙を提供。来場者が折った鶴は、雨に濡れても溶けない純白の千羽鶴となって、慰霊の祈りを込めて広島にささげられた。
石原亮子社長は、「ライフラインが整った被災地には、その次の支援が必要。例えば割れる心配のないKABINを贈りたい。花を飾って少しでも安らぎを感じていただければ」と語る。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)