ドイツが6日に2022年までの原発廃止を閣議決定したことに対し、国内外で批判が高まっている。仏エネルギー相のエリック・ベソン氏は「一国の判断とはいえ、まずヨーロッパ枠内で協議してほしかった」と発言。また、欧州議会の各国エネルギー担当議員はドイツに対し、脱原発が各国とEUに強いるコスト負担について公式に説明するよう要請した。
国際エネルギー機関の田中伸男事務局長は、「たった一国の決断が、ヨーロッパ全体のエネルギー供給に影響を及ぼす可能性がある」と話し、安定した電力供給と温室効果ガスの削減目標達成のためには、今後も原子力による発電が不可欠としている。
ドイツの原発廃止を巡っては、原子力発電所を運営する国内の電力各社からも不満が噴出している。電力産業は原発閉鎖により総計220億ユーロ(2兆5740億円)もの損失を被るとの予測もあり、イーオン、RWE、ヴァッテンファルなど大手電力各社は連邦政府に補償を求め始めた。
RWEのユルゲン・グロースマン社長は7日、メルケル首相へ公開書簡を送り、自社のグンドレミンゲンB原発の閉鎖を予定より4年遅い2021年に延期することを要求した。また、原発の稼動延長と引き換えに昨年導入された「燃料税」の課税継続も各社には痛手で、イーオンは連邦を提訴する構えだ。
福島の原発事故後、ドイツでは原発9基が運転を休止し、従来の原発発電容量の約60%しか稼動していない。政府は脱原発と並行して自然エネルギー発電の拡大を急ぐが、発電施設と送電線網の拡充に「少なくとも4年はかかる」(環境省)ことから輸入電力に頼ることになる。
だが、冬の電力消費ピーク時には輸出国自身が電力不足になるため、ドイツ国内での停電も懸念されている。また、原発閉鎖により数千人単位の雇用が脅かされるほか、自然エネルギーの助成が電力料金に反映されるのは必至だ。
世界初の「脱原発」は英断だが、実現への道のりは険しい。(独デュッセルドルフ=田中聖香)