環境負荷が低く、健康的と評判の自転車通勤。東日本大震災では交通機関がマヒする中、災害に強い通勤手段として注目を集めたが、NPO自転車活用推進研究会(杉並区)が昨年11月から都内で実施している調査によれば、今年春以降に自転車通勤する人が増えているという。
■昨年末の4.5倍、震災直後の2倍に
事務所が五日市街道に面する同NPOでは、昨年11月および3月以降にかけての毎月1~2日、朝7時から8時半に事務所前を通過する自転車の台数をカウントして実態を把握。7時半から8時までの30分間の通過台数は、11月16日が66台だったが、計画停電で都内の交通機関がマヒした3月14日には140台に増加。台数はその後も増加傾向を続け、6月6日には291台と昨年末の約4.5倍、震災直後の約2倍に達した。
この結果について同NPOの小林成基事務局長は「昨年同時期のデータがないので、増えた理由が震災なのかはわからない。春で気温が上がったために増えた可能性もある」とする一方、「明らかに震災以後に自転車に乗っていると分かる人も多い」と話す。
荷台にチャイルドシートが付いたママチャリを漕ぐ背広姿のサラリーマン、趣味用と思われる高級なスポーツ自転車にヘルメットも着用せずに乗る人などが震災以降、目につくようになったと小林氏は指摘。「以前から自転車通勤している人は安全意識が高く、見た目や走り方が違う」(小林氏)。
■車道通行の徹底が課題
一見すると好ましい傾向だが、問題もある。道路交通法で自転車は歩道ではなく車道左側を走ることが義務付けられているが、同調査では車道を通行する自転車の比率が開始時の55%から5月26日の29.6%へと一貫して減っているのだ。
自転車の歩道通行は歩行者の安全を脅かし、交差点での出会い頭の事故の要因ともなり非常に危険だ。6月6日の調査では34.4%に持ち直したが、小林氏は「ようやく底を打った状態」と懸念する。
車道通行の徹底には交通教育、路上駐車の取り締まり、車道左側への自転車レーンの設置などが不可欠だ。震災で自転車が見直される中、改めて安全通行のあり方が問われている。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年6月11日