被災地で仮設住宅の建設が急ピッチで進む中、入居率の低さや経済不合理性など、問題点を指摘する声も多い。このまま着工を続けるべきか、集団移転などへ早期に移行するのか、迅速な政治判断が迫られている。
厚生労働省によると、被災7県の仮設住宅の入居率は4割台にとどまる。入居手続きに時間がかかっているうえ、避難所のような生活支援が受けられないことから、被災者の不安があるものと見られる。
仮設住宅を取り巻く問題は数多い。
仮設住宅は2年後の撤去、退出を前提としているため、被災者が自立再建できなかった場合にどうするか。宮城県気仙沼市で災害対策にあたる責任者は「仮設住宅に入居できても、退職した高齢者などは住宅ローンが組めないから、その後の不安が残る」と話す。
仮設住宅への入居辞退者も出ているが、こうした人たちは生活費が自己負担になるので、避難所から出られないという事情もあるという。
その一方で、民間賃貸住宅の入居に補助金を出す「みなし仮設住宅」制度の利用が2万4000戸を超えていることを考えると、マッチングの問題もありそうだ。
仮設住宅撤去後の建築資材の処分問題も今後でてくるだろう。阪神淡路大震災で仮設住宅を建設した神戸市は、3万2346戸を建設。うち1万2625戸を撤去後に海外の被災地へ送っている。残りの約2万戸は「リースは返却したが、処分したものもある」(神戸市)といい、新たな「ゴミ」を生んだ。
一戸あたりの建設費約240万円に対して、撤去費用は約100万円かかる。こうしたムダを省くために都市計画家からは、「仮設住宅の建設費用、被災者生活再建支援金、土地購入に関して補助金が受けられる防災集団移転促進事業を組み合わせることで、復興住宅をつくる選択もある」との声も聞かれる。
仮設住宅を巡っては、発注の仕組みについても疑問の声があがる。県から社団法人プレハブ建築協会へ一括発注するため、地元の建設業者が受注できないというのだ。こうした事情を明らかにするため、仙台市民オンブズマンは、県や市に対し情報公開を請求中だ。
仮設住宅は、被災者の生活支援を第一に考えるのが原則。制度ありきではなく、被災地の声に耳を傾けた復興支援が望まれる。(オルタナ編集部=有岡三惠)