中曽根元首相が自然エネ派に変節

26日に開催された「太陽経済かながわ会議」(神奈川県提供)

科学技術庁長官や原子力委員会委員長を歴任するなど、原発推進の先駆者だった中曽根康弘元首相が最近、自然エネルギー推進を主張し始め、世間の耳目を集めている。

6月26日、神奈川県などが横浜市で開いた「太陽経済かながわ会議」にビデオメッセージで登場し、「原子力には人類に害を及ぼす一面がある」「自然の中のエネルギーをいかに手に入れて文化とするか(が大事)」などと主張した。

政治家現役のころから「風見鶏」の異名をもっていた中曽根氏だが、世間の評判は「さんざん原発を推進しておいて何をいまさら」や「脱原発に回ってもらえるなら風見鶏も大いに結構」などと賛否が渦巻いている。

日本の原子力発電は、研究開発費が始めて国家予算に計上された1954年がスタートとされているが、予算を提出したのは、当時改進党に所属していた中曽根康弘元首相らだ。

中曽根氏は6月26日、「太陽経済かながわ会議」にビデオメッセージで登場した。このシンポジウムは、太陽光発電を中心とした新たなエネルギーに基づく経済社会の構築を神奈川が率先して取り組み、全国に発信するのが目的だった。

黒岩祐治神奈川県知事のインタビューに答える形でスクリーンに大写しされた中曽根氏は次のように語った。

「人間の発展は、自然の中のエネルギーをいかに手に入れて文化とするかであり、それが人間と自然の関係です。原子力という巨大なエネルギーも人間のために有効利用するというのが知恵で、自然との闘いを部分的に克服してきました。しかし、原子力には人類に害を及ぼす一面もあって、それを抑えるのが人間の文化と歴史です。今回の事故もその中で捉えたらいいかと思います」

黒岩知事がシンポジウムのテーマである『太陽経済』について尋ねると、「太陽の恵みをエネルギーとして活用したいという努力はある程度成功したが、エネルギー量としてはこれからの課題」と答えた。そして、次のように締めくくった。

「これからは太陽エネルギーに転換していく段階でしょう。これをさらに上手に使うというのが文明であり進歩。これからは日本を太陽国家にしていきたい」

最後は堂々の応援メッセージだったが、御年93歳にして弁舌滑らか、風見鶏ぶりは今なお健在の様子だった。

ビデオメッセージの後は、黒岩祐治知事がコーディネーターを務め、三菱総合研究所の小宮山宏理事長、ソフトバンクの孫正義社長、南川秀樹環境事務次官、一般社団法人太陽経済の会の山崎養世代表理事らによる特別セッションが行われた。

その中で孫正義社長は「さすが黒岩元キャスター、原発推進の中心だった中曽根さんに『これからは太陽国家』であると断言させたのは見事な金星。歴史的な転換点」と何とも微妙な言い回しで感想を語った。

出席者からは、菅直人首相が成立に意欲を示す再生可能エネルギー特別措置法案について「太陽光発電の普及に必要」と早期成立を求める声が相次いだ。(横山渉)

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..