「3・11」を通じて、原子力発電の危険性をまざまざと思い知らされた日本。だからといって原油への回帰は、世界がすでに「石油ピーク」を迎えた中では限界がある。資源価格も高騰している。自然エネルギーの普及はどう進めればよいのか。石井氏はEPR(エネルギー収支比)を踏まえた「低エネルギー社会」の実現にこそ展望があると説く。
石井吉徳氏 東大理学部(地球物理学)卒、同工学部教授、国立環境研究所長を経て、石油ピークを踏まえた低エネルギー社会を提唱。東京大学名誉教授、NPOもったいない学会会長。
(本誌25号・特集内インタビューの続き)
■「太陽、風力エネルギー100%」はありえない?
――ウランも化石燃料も有限資源だが、太陽エネルギーは無限だ。太陽エネルギーで100%まかなえると主張する人もいる
現代の工業文明に必要なエネルギーを太陽エネルギーだけから得ることは不可能だ。小学生でもわかる単純な理屈だが、大人ほどこの事実が理解できない。なぜか。太陽光発電は昼間しか発電できないからだ。風力エネルギーも風任せ、間欠的だ。
そう言うとすぐ「蓄電すればいい」と反論するが、社会全体で巨大なエネルギーを消費するのに、それを全て蓄電池でまかなうことなどできるはずがない。そもそもソーラーパネルも蓄電池も作るのに石油が必要ではないか。現在の文明は石油に依存しているという根本的な事実をまず直視することが大事だ。
――自然エネルギーの普及には限界があると
私は決して自然エネルギーの普及を否定しているわけではない。しかし文明を維持するにはEPRは10程度必要なのに対して、太陽光発電は5前後に過ぎない。石油への依存とは、EPR的に言えば「質の良いエネルギーに依存している」ということだ。よって、人類は2006年にピークオイルを迎えたけれども、自然エネルギーがそれに置き換わるという単純な話ではないことは、知っておく必要がある。