日本経団連の米倉弘昌会長は、原発がとてもお好きで、自然エネルギーがとてもお嫌いなようだ。そんな御心情が記者会見などのコメントからにじみ出てくる。5月に浜岡原発が停止した時も、豊田章男・トヨタ自動車社長や鈴木修・会長兼社長がこれを受け入れて評価したのに対し、米倉会長は真っ先に批判した。米倉会長の数々の「お言葉」をお届けする。
福島原発の事故の際、米倉氏はこう言い放った。
「1000年に一度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政が曲がり角に来ているとは思っていない。(原子力行政は)もっと胸を張るべきだ」(3月16日)
進行形で放射能漏れを起こしている原発を前にして「津波に耐えた」という表現。この発言に首をかしげ、違和感を感じる人は少なくないだろう。
東京電力擁護の発言も目立つ。
「東日本大震災が関東大震災の数10倍の規模に上ることも考慮すれば、東電だけに責任を負わせるべきではなく、国が(主導して)損害賠償に対応すべきだ。東電は被災者の側面もあり、政府が東電を加害者扱いばかりするのはいかがか」(4月7日)
「東電が免責されるのは当然で、国が全面支援を。国営化はせずに民営でいくのが望ましい」(5月23日)
異常に巨大な天災地変の場合、電力事業者の賠償責任を免責するという原子力損害賠償法上の規定が適用されなかったことについて苦言を述べたものだ。
放射性物質を撒き散らしている東電に向って「被災者」という表現は、生活を捨てて避難せざるを得なくなった被災者たちにとって挑発的とも受け取れる。一方、事業者を免責にするという考え方には、「最終的に国が責任を取る形にすると事業者に変な安心感を与え、原発の安全対策の手抜きにつながる」と指摘する向きもある。
菅首相が電力会社の事業形態を発電と送電に分ける「発送電分離」の議論が必要と発言したことについては「動機が賠償問題にからみ不純だと思う。こうしたときには極端な自由化を主張する人が出るが、それが正しいかどうか」(5月23日)とまで言い切った。
一方で、自然エネルギーが増えることに対してはアレルギー反応を見せる。
太陽光や風力など自然エネルギーによる発電比率を2020年代のできるだけ早い時期に 20%に高める方針を首相が表明したことについて「数字だけ独り歩きするのは危険だ。国民に不安感を与える」(5月26日)と反対。
同じく、首相が早期成立を目指す再生エネルギー法案については「性急な導入が電力価格の上昇をもたらすことになれば、地域経済の弱体化や雇用喪失にもつながりかねず、国民生活に及ぼす影響は計り知れない」(6月27日)と難色を示した。米倉氏は、自然エネルギー拡大による雇用創出効果は考えていないようだ。
経団連会長として「妄言」とも思える言葉を多く残している米倉氏だが、そのなかでも多くの人々を唖然させたのは、政府が浜岡原発の停止要請をした際に飛び出したこの発言だ。