「ウォールストリートの投資家は、この30年間、原子力に投資していない」。『プランB』の著作で知られるアースポリシー研究所(ワシントンDC)所長のレスター・ブラウン氏はこのほど来日し、オルタナのインタビューにこう答えた。
ブラウン氏は「米国では、原子力発電から自然エネルギーへと投資の対象が移行している」と指摘し、福島第一原発事故の影響で「日本でも原子力発電は減少する」と見る。
その第一の理由は、「世論は原発の推進を許さない」。さらに、放射性廃棄物の処理コストや管理コストを考えても、「経済的なメリットがない」からだ。
米国では、過去2、3年で約200基の新しい風力発電所ができたという。機関投資家の積極的な投資が、風力発電事業を後押ししている。米ギャラップ社の調査では、福島第一原発の事故を受け、70%の米国民が自国でも原発事故が起きると懸念を強めていることもわかった。
ブラウン氏は、「日本は地熱発電において世界のリーダーになるべきだ」とし、国家戦略として地熱発電を進めれば、日本の経済すべてを賄うほどのポテンシャルを持つだろう、と見ている。
「環境保護をしなくても地球は存続できる。私たちは、地球を守るためだけではなく、文明を守るために、変わらなければならないのだ」(ブラウン氏)。(オルタナ編集部=吉田広子)
レスター・ブラウン
1934年、ニュージャージー州生まれ。ラトガーズ大学、ハーバード大学で農学・行政学を修める。59年、農務省に入省し、国際農業開発局長を務める。74年、地球環境問題に取り組むワールドウォッチ研究所を創設。84年には年次刊行物『地球白書』を創刊。01年、アースポリシー研究所を創設して所長に就任。03年には『プランB』を発刊した。