菅首相の「脱原発依存」宣言や福島県の復興ビジョン素案での「脱原発」の明記など、政府や地方自治体で原発依存からの脱却をめざす動きが活発化している日本だが、対外的には従来の原発推進の姿勢は変わっていない。6月にドイツのボンで開かれた国連気候変動会議の第34回補助会議で、何と日本は気候変動対策として原子力発電の利用を認めるよう主張していたのだ。
■ドイツや途上国らから「ブーイング」
日本が「原発推進」を主張したのは6月11日、京都議定書の特別作業部会(AWG-KP)の席上、クリーン開発メカニズム(CDM)をめぐる議論の最中でのこと。
同メカニズムは、先進国が途上国に技術や資金を支援して温暖化ガスの排出を減らし、削減できた分を支援した先進国の排出削減分に組み入れること(カーボンオフセット)ができるというもので、日本はCDMに新たに原発利用を組み込む案を支持したという。
発電時にCO2を出さないとされる原発は温暖化対策の有望策とみられた時期もあった。しかし、いまだ事故が終息していない「フクシマ」の当事国による原発推進表明とあって、ドイツやスイス、途上国など各国やNGOの代表からは反発が相次ぎ、日本は当日の「化石賞」にも選ばれた。
■足元みられる日本
国際環境NGO「FoE Japan」のスタッフで、この問題に詳しい柳井真結子氏は「会議参加国からは『事故のあった日本がなぜ?』との声が上がった。日本は引き続き原発を推進する、というメッセージを世界に送ったことになる」と指摘する。
そもそもCDMは京都議定書の履行に必要だとして認められたものだ。同議定書の第一約束期間は2012年に期限を迎えるが、日本は翌年以降の第二約束期間への参加を「主要な排出国が参加していない」として強硬に拒否している。
その日本がCDMという気候変動対策のルール作りには熱心というのだから、途上国をはじめとする各国が鼻白むのも無理はない。国内でほぼ絶望的な原発の新規建設の活路を、気候変動対策の名目で輸出に見出す日本の戦略はすっかり足元を見られている。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年7月21日