コミュニティデザインとは、どのような仕事なのか。地方の高齢化、空洞化する市街地、森林問題など、現代日本が抱える社会的問題を解決するために行う活動の中で、筆者が切り拓いた職能だ。社会の閉塞感を突破する重要な役割を担う。
本書では、著者が関わってきたプロジェクトごとに、地域の課題発見、解決のプロセスが具体的にまとめられている。もとはランドスケープデザイナーだった著者が、モノづくりから距離をおくことで見出したデザイン方法の過程が記されている。
市民参加型のパークマネジメントが兵庫の有馬富士公園で大成功したことをきっかけに、著者はハードだけでなくソフトのデザインへと傾倒していく。以降、同県の家島では特産品を開発・販売する NPOを立ち上げ、少子高齢化の進む岡山の笠間諸島では子どもに島の振興計画を立てさせる。住民を巻き込みながら、自律したまちづくりの方法を開発していく。
それぞれ個別解であるが、関わる地域やまちの人を元気にすることは一貫している。一人ひとりと丁寧に向き合うことで、人の関係性に変化を起こす。それがNPOやサークルなどの新しい地域活動を生み出し、コミュニティを成熟させる。地域資源の中で最も大事なものは、そこに住まう人だと気づかされる。
東北復興でも、道路や建物と共にコミュニティデザインが必要だろう。デザイナーだけでなく、行政や住民などに向けても多くのメッセージを本書は発している。(オルタナ編集部=有岡三恵)
『コミュニティデザイン 人がつながるしくみをつくる』 山崎亮著
学芸出版社 四六判・256頁・定価1890円(本体1800円)