エネルギー政策をめぐる国民的な議論を深めようと、民間有識者が中心となって設立した「みんなのエネルギー・環境会議」は22日、都内で発足記者会見を開いた。福島第一原発事故、震災からの復興でエネルギーに国民の関心が集まる中、さまざまな立場や考え方の人々がオープンに語り、議論し、対話する場をつくる。
発起人には、原発をめぐって多様な考えを持つ人が集まった。幸せ経済社会研究所の枝廣淳子さん、APバンク代表理事の小林武史さん、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也さんなどは原発に懐疑的な立場。一方で、原発稼働を容認する一橋大学の橘川武雄教授、日本経団連のシンクタンクの研究主幹で経産省元官僚の澤昭裕さんも名を連ねている。
枝廣さんは「原発の賛成、反対という単純な二項対立を抜け出し、多くの人が納得できる未来をつくるため、論点を洗い出したい」と話す。会議では「こうあるべき」という特定のスタンスも打ち出さない。これまでのエネルギー政策は経済産業省主導でつくられ、国民も自ら進んで決定に参加しなかった。そうした状況を変えるのが、発起人らの希望という。
「『私と意見が違っても、あなたが意見を主張する権利を絶対守る』という民主主義のルールを守りたいという発起人の思いは同じ。統一的な結論はでないだろうが、この取り組みを通じて国民の議論が起こることを期待したい」と、枝廣さんは話す。
7月31日に諏訪東京理科大学(長野県茅野市)で行われる第一回会議では、原子力、再生可能エネルギー、政策決定、ライフスタイルの4テーマで議論が行われる。その内容はユーストリームでネット中継され、一般市民の議論への参加も求める。また今後は東京以外の全国各地で会議を行って、日本全体への議論の広がりを促したいという。第一回以降は、参加者も広げる方針だ。
霞が関の省庁から押しつけられた未来ではなく、市民の議論の末に合意点を集め、それを社会の中で実現していく。エネルギーをめぐるこうした取り組みが、成熟した民主主義、そして新しい社会づくりに活かされることを期待したい。(オルタナ編集部=石井孝明)