1974年に企業献金を廃止した電力業界の役員やOBらが、自民党側に個人献金を続けている実態が明らかとなっている。共同通信が23日に報じた所によれば、個人献金は76年には始まり、2009年の時点で個人献金額の72%強を占め、その額は4702万円に上る。自民党は20日にまとめた国家戦略に関する報告書で当面の原子力発電の維持を明記したが、同党の政策に電力業界側からの献金が何らかの影響を与えているのは確実とみられる。
■沖縄電力役員からは献金なし
09年の献金総額は東京電力の1427万円を筆頭に中国電力の680万円、中部電力の615万円と続く。16日付のしんぶん赤旗は、個人献金額が職位と連動している点を暴露。東京電力の場合、勝俣恒久会長、清水正孝社長(当時)が30万円で、副社長6人はいずれも24万円だ。2位の中国電力も同様で、会長と当時の社長が38万円、副社長が32万円となっている。
興味深いのは、個人献金を行った9つの電力会社はいずれも原発を抱えていることだ。原発を保有しない沖縄電力の役員らからの献金はなかった。
■「大震災で状況一変」当事者意識まるでなし
地域独占企業である電力会社が企業献金を廃止したのは、献金が政財界の癒着につながるとの批判があったためだ。しかし実際には、個人献金という「抜け穴」を使って電力業界が政治に影響力を行使しつづけていたことになる。
先の自民党の国家戦略報告書では、東京電力福島第一原発事故について「わが国エネルギー政策を根幹から揺るがした」「大震災によって状況が一変」と触れるのみだ。ここからは、自党が政官財一体のぬるま湯の中で原子力政策を進めてきた「原子力ムラ」の当事者であり、その結果が今日の原発震災の惨禍を招いたという自覚や反省はうかがえない。
まるで「震災がなければ原子力ムラは安泰だった」と言わんばかりの同党の認識を、電力業界役員らからの献金が支えている構図だ。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年7月25日