津波で多くの漁業従事者が収入源を断たれた三陸地方で、漁網を使ったグッズ製作が新たな雇用を生んでいる。浜の女性たちが作る「浜のミサンガ 環(たまき)」は、インターネットと店舗で販売されて飛ぶように売れた。製作が間に合わず、新たな作り手を募集している状況だ。
ミサンガは「お守り」にもなるアクセサリーで、願をかけて手首に結び付け、肌身離さず愛用する人も多い。このミサンガを、壊滅的な被害を受けた海辺の町の女性たちが、未使用の漁網と麻ひもを編んで手作りしている。価格は、太さの違う2種が1セットで、税込1100円だ。
同商品はツイッターやフェイスブックなどで評判を呼び、7月11日の「第1期インターネット予約販売」には43万件ものアクセスが集中し、わずか2時間で2千セットが完売した。ネット販売の他、ファッションブランド「SHIPS(シップス)」の渋谷店など、東北と関東を中心に全国十数店舗でも販売しているが、どこでも入荷待ちだという。
同事業を立ち上げた「三陸に仕事を!プロジェクト実行委員会」は、8月1日に、5月からの約2カ月間の販売実績を発表した。生産本数は累計5658本で、すべて完売。製作チームは、岩手県の釜石と三陸町、宮城県の歌津の計3カ所にあり、158人の作り手の収入合計は約326万円に達している。
「三陸に仕事を!プロジェクト実行委員会」は被災企業で構成され、メンバー自らも被災者だ。三陸に留まり、三陸を復興させたいと願う人々が、三陸の雇用創出のために立ち上がった。同委員会の南部哲宏氏は「湾内の瓦礫の量はすさまじい。全面的な漁業再開まで少なくとも3年はかかるだろう。漁網を使いたくても使うあてがない漁師たちが、ミサンガの材料として譲ってくれる」と沿岸地域の厳しい現状を語る。
仮設住宅に入れば、その月から水道代や電気代を請求される。仕事と収入の確保は急務である。ミサンガの作り手の報酬は、1セットにつき570円以上。約20セット作れば、1万円以上の現金収入が得られる。「第2期インターネット予約販売」は8月11日に開始予定だ。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)2011年8月1日