独立行政法人の産業技術総合研究所(茨城県つくば市)が企業と共同開発した新素材「ハスクレイ」が、省エネの観点から注目されている。これまでの素材とほぼ同じ値段で、多量の水蒸気の急脱着が可能だ。除湿剤(デシカント)や空調などへの利用が期待でき、応用すれば日本発の技術で冷暖房の省エネが一段と進む可能性がある。
これまでの乾燥材、また空調に使われる湿度の調整では、ペット用のトイレや消臭剤に使われる鉱物のゼオライトやシリカゲルなどからつくられた素材が使われていた。
産総研のハスクレイは非晶質アルミニウムケイ酸塩(学名の頭文字ハス)と低結晶性粘土(英語でクレイ)とからなる複合体を合成することで、従来の素材の約2倍の吸着性能を持つ物質を作った。鉱物由来の材料とは異なって粉状であり、成形は容易で耐熱性も優れる。
最近の空調では、乾燥材を用いて湿度を調整するデシカント空調が増えている。従来の空調は湿度調整などが行えず、温度が過剰に上下する傾向にあった。デシカント空調では湿度を一定にすることで快適な室内環境を保ち、また温度調整の熱源も少なくて済むため、省エネとなる。ハスクレイはこの湿度の調整に利用できる。
09年に商業化のめどがつき、現在は粉末状のハスクレイの量産や生産への応用について、磁気記録材料大手の戸田工業、湿気などを吸着するデシカントローターを生産する三菱製紙などが協力している。
同研究所の研究員末益匠さんによれば、「社会からの節電の要請にメーカーが答える中で、ハスクレイへの問い合わせが増えました」と、この素材に集まる期待を話す。
今年の夏は電力不足により冷房を使わないことが社会全体に要請され、熱中症の増加など節電による弊害が起こっている。日本の電機メーカーは世界で最もエネルギー効率の高い家電製品をつくり、空調もその中の一つ。しかし一段の省エネ化が求められている。ハスクレイはその一段の進化を促しそうだ。(オルタナ編集部=石井孝明)