ヒマワリで除染だめ? NPOが異例の見解

チェルノブイリ救援・中部がウクライナで取り組んでいる菜の花の栽培地(同法人提供)

被災地で震災復興のシンボルとして育てられるヒマワリについて、「放射能除染のための栽培は薦められない」とあえて訴えるNPO法人がある。福島県では国や民間が入り乱れてのヒマワリ栽培が盛んになっており、波紋を呼びそうだ。

このNPOは名古屋市に事務局を置く「チェルノブイリ救援・中部」。チェルノブイリ原発事故の被害者救済を目的に、20年以上活動を続ける老舗の団体だ。2006年からはウクライナのナロジチ地区で「菜の花」を植え、放射能除染とバイオディーゼル燃料化を試すプロジェクトに着手。その成果を踏まえて、今回の原発事故でも福島の各地で土壌浄化に協力しているが、菜の花がいつしか「ヒマワリ」と混同され始めた。

「われわれは逆に、ヒマワリ栽培に対する危惧を抱いている」

8月中旬、同法人は異例の「見解」をホームページに掲載。それによると、ヒマワリは菜の花よりも土壌中の放射能を吸い上げる能力は低く、水耕栽培での効果を示す研究論文はあっても、福島で問題になる土壌中の放射性セシウムを効率的に吸収するという論文は見当たらない。また、茎や根は大きく育つうえ木質成分のリグニンも多いため、菜の花のような分解、発酵が難しい。このため大量の汚染ヒマワリの処理が問題となる。

「確かなデータに基づかずに行動すれば、汚染された土地とバイオマスが残ってしまう。安易に焼却するのは危険」と同法人は警告する。

ヒマワリによる除染実験は、農水省が福島県飯舘村で日本原子力研究開発機構などに委託して5月下旬から行っている。同省の担当者は「実績のある団体の見解で、貴重な意見として受けとめる。国としてもさまざまな植物の中でヒマワリにどれほどの効果があるか客観的にデータを集めたい」と説明したうえで、数千本が成長するヒマワリの処理については「村内に設置する実験用の小型焼却炉でデータを取りながら焼却する計画だが、すべての処理は難しいかもしれない」としており、NPO側の懸念を増幅させそうだ。(オルタナ編集委員=関口威人)

チェルノブイリ救援・中部の見解
http://www.chernobyl-chubu-jp.org/_userdata/himawari.pdf

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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