福島原発事故後、ドイツで停止中の8基の原発のうち、1基を冬の電力消費ピークに対応するための「コールドリザーブ(スタンバイ)」としておく案が変更され、すべてを永久凍結することになった。予定ではフィリップスブルク1号機(バーデン・ヴュルテムベルク州)を電力不足が生じた際の再稼動用として2013年春までスタンバイするはずだった。
原子力専門家によると、スタンバイ原子炉は、再稼働に時間がかかりすぎるため、緊急発電時には不向きと指摘。さらに、「原子炉は、スタンバイでも選択肢に入れない」というメルケル首相(キリスト教民主同盟=CDU)の見解もあり、火力・天然ガス発電増加に方向展開した。
これにより、永久凍結となった8基は、福島事故を受けて今年3月より稼動停止をした旧型7基と、トラブル再発で2009年から停止したクルメル原子炉1基となる。
これら8基の原子力発電量は、総発電量のうち、約8%を占める(2010年)。8基停止による電力不足分は、フランス、チェコなど近郊国から電力輸入で補充。そのため、今夏の計画停電などの措置は一切不要だった。
フリップフブルク1号機永久凍結による国内南西部の電力不足分は、マインハイム、エンスドルフの石炭火力発電所、マインツ・ウィースバーデンの天然ガス発電所などの発電量増加(1009メガワット)で安定供給の対応に備える。また、今冬から来冬にかけて危険があるとされる電力不足分は、原発のないオーストリアから優先的に輸入する(1075メガワット)ことを決定した。
原子廃棄物の貯蔵施設先の選定、火力発電に伴う二酸化炭素(CO2)の増加などの問題は、今後の大きな課題となる。脱原発によるエネルギー革命への道のりは、まだまだ先が長い。 (ハイデルベルク・シュピッツナーゲル典子)