東京都新宿区で9月11日に開催された「原発やめろデモ」は、大量の警察官を投入した過剰な警備体制の中、12人の大量逮捕に発展。ところが警視庁は2日後の13日に早くも6名、翌日にはさらに1名を釈放した。強引な警備が裏目に出た模様だ。
■警察がデモ隊を挑発?
新聞各紙は12日、警察発表をなぞる形で「脱原発デモで12人逮捕、機動隊員暴行などで」(読売)などと報じた。検挙理由は都公安条例違反が1名、警備中の機動隊員を殴打するなどの公務執行妨害が11名というものだ。
記事を読むと、あたかもデモ隊が傍若無人のふるまいを行い、警察がこれを取り締まったかのように受け取れるが、実態は全く違う。
記者は当日、デモを取材していたが、出発直後からトラックに音響セットを乗せた「サウンドカー」とデモ参加者との間に警察官が何度も強引に割って入ろうとして揉み合いが発生。混乱のたびに数人ずつ検挙された。
こうした強引な警備は、4月10日に東京・高円寺で開催された原発やめろデモでは全く見られなかったもので、当然1人も逮捕者は出なかった。今回の大量逮捕は、デモ隊を挑発するかのような警備が招いた事態だ。その非はデモ参加者ではなく、警視庁にある。
■接見禁止つかず、取り調べも「やる気なし」
逮捕からわずか2日後に半数が釈放されるという対応からは、このまま勾留を続けても公判を維持できないのでは、との警察の焦りがうかがえる。事実、14日に釈放された1名は勾留請求がされたものの、裁判所はこれを却下した。
デモ主催者でリサイクル店「素人の乱」5号店店主の松本哉氏は「今回、12人全員に接見禁止が付かなかった。これは異例のことで、釈放された二木信(ふたつぎ・しん)氏も『警察の取り調べにやる気が感じられない』と言っていた」と話す。規制ありきで警察が暴走した可能性を疑わせる指摘だ。
6月11日の新宿での原発やめろデモでは、新宿駅東口のアルタ前広場が約2万人の群衆で埋め尽くされた。「警察は意地でも脱原発気運を盛り上がらせたくないのでは」と松本氏は語るが、原発の安全神話が崩壊した今、脱原発のうねりを力でねじ伏せることは不可能だ。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年9月15日