芸術で地域おこし、若者が集い雇用が生まれる美術展

「tsumuji(つむじ)」には町営のショップ&カフェのほか、タイ式マッサージ、ガレットの楽しめるカフェなど7店舗のテナントショップも設けられている。会期中以外でも、ライブなどのイベントは随時実施されている

地域おこしと言っても、東京の専門家が主導権を握る例は多々ある。地域開催のアートフェスティバルも似た状況にある。美術展「中之条ビエンナーレ」がユニークなのは、雇用創出とも連動した地元発信型にある点だ。

本展は群馬県中之条町という山間部で2年に1回開催される美術展で、今年で3回目。総合ディレクターを務める山重徹夫は湘南在住のデザイナーだったが、この地に惚れ込み、移住して本展を手がける。彼に引っ張られて若いスタッフ、作家も住み着き始め、典型的な過疎地に変化が起きた。

鈴木孝幸「place/white」。反復形式により周囲の自然環境にリズムを生み出すランドアート作品

2009年の開催時は来場者16万6000人、経済効果は2億2000万円という。2010年7月には町営の総合センター「tsumuji(つむじ)」がオープン。事務局のほか高感度のカフェやショップを併設。独自開発のアーティストグッズはきわめて珍しい。カルチャースポット出現は、文化の仕事創出につながる。移住作家にはデザイン系の公共事業発注もある。

川田順「ハダリー」。廃校に設置されたガラス瓶群には、置き去りにされた時の流れが封じ込められている

中央のスター作家の地方巡業という側面が、今人気の地域アート展にはある。名目だけの地域文化だ。本展では、中央画壇の権勢・情実を排し、独自選定の作家にじっくり滞在制作してもらう。ボランティアには地元のお年寄りが多く(1500人)、都市部にありがちなアートファンや美大生ではない。本当の意味での地元発信の精神が息づく。

今年は125作家の作品を、さしわたし20キロメートルの広大なエリアに展開。現代アートに彩られた奥深い森、レトロな町並み、古びた廃校は、壊し、建設するだけが開発ではないと教えてくれる。(アライ=ヒロユキ)

旧六合村で催された8月19日前夜祭の様子。アラブ白拍子計画は、日本の伝統とアラブを融合させたワールドミュージックを披露

「中之条ビエンナーレ2011」
8月20日(土)〜10月2日(日)
9:30〜17:30 木曜定休/入場無料
群馬県中之条町 町内43ヶ所(総合受付:tsumuji)

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中之条町役場「中之条ビエンナーレ実行委員会」 TEL 0279-75-8802(平日のみ)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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