関東大震災や第二次世界大戦など、これまでも日本の都市は復興に直面してきた。そこから現代都市をどのようにつくり上げてきたのか、またこれからどのような環境を目指すのか。東京で開催される二つの展覧会に、大きなヒントがありそうだ。
■ ヒロシマから大阪万博へ、メタボリズムが夢見た未来
1960年、「メタボリズム」という日本発の建築運動が始まった。それは新陳代謝を意味する生物用語で、建築や都市が生命体のように成長、変化していくことを謳い、高度経済成長や科学技術の進歩を背景に壮大な未来像を描いた。
グループを結成したのは黒川紀章氏など当時の気鋭建築家やデザイナーなどの7名。しかし発想の原点は広島の戦後復興計画に深く関わった建築家の丹下健三氏、浅田孝氏にあった。
浅田氏は、「METABOLISM/1960——都市への提案」という活動のマニュフェストの序文に「われわれは、人間社会を原子から大星雲にいたる宇宙の生成発展する一過程と考えている」と記す。小さな原子の核融合で都市が壊滅に陥ったヒロシマの経験から発せられた言葉だともいわれている。
「環境開発センター」という事務所を設立し、当時は聞き慣れなれない「環境」という言葉を根付かせた人物という見方もある。科学技術と自然環境への眼差しがメタボリズムを生み、その後大阪万博へと展開していく。
その過程が、東京・六本木の森美術館で開催中の「メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン」でつぶさに紹介されている。今もなお直面する都市環境問題のルーツと課題が数多く示されている。
■2050年の東京はどうなる?
一方、一極集中の東京(首都圏)が抱える問題を浮き彫りにしつつ、40年後の都市像を提案しているのが「東京2050//12の都市ヴィジョン展」だ。横浜国立大学、首都大学東京、東京大学など12の在京大学による提案が、24日より東京・丸の内の丸ビルホールで開催される。
人口、エネルギー、交通、産業、福祉、防災――。多層的で複雑な課題に対して、子や孫の世代の生活をどのように想定できるのか。ライフスタイルや都市像の転換点を迎えている今だからこそ未来環境を空想してみるのもよいかもしれない。(オルタナ編集部=有岡三恵)
森美術館
http://www.mori.art.museum/jp/index.html
東京2050//12の都市ヴィジョン展