今なお収束しない東京電力福島第一原発事故では、大量の放射性物質が拡散している。先日も日本原子力研究開発機構と国立環境研究所が、放射性セシウムの汚染範囲状況をそれぞれ公表したが、そうした中、放射性物質の拡散地図をデザインしたTシャツ「Help Japan!」が静かに注目を集めている。
■「毎日着て歩けるものを」
9月に発売された同Tシャツは、放射性物質が東電福島原発を中心に東日本に拡がる様子を図案化。その地図の横には、忌野清志郎の歌「空がまた暗くなる」から取った「大人だろ?勇気をだせよ」という、どきりとする言葉とともに「Save our Children(子供を守れ)」とのメッセージがプリントされている。価格は2枚1セットで3000円。経費を除いた1000円が、東電原発事故で被ばくした子供の支援に充てられる仕組みだ。
Tシャツを制作したのは長野県松本市で建築設計事務所を営む須永豪氏。「電力会社がスポンサーの大手メディアには期待できない。一方で、ネット上では必要な情報が手に入るが、ネットに接していない人にはほとんど伝わっていない」と制作の動機を語る。
そこで須永氏が注目したのがTシャツだった。「毎日着て歩けるし、ファッションとして通用するデザインであれば情報が伝わる」と考え、汚染地図を図柄に用いた。
Tシャツを実際に着用した人からは、会話の中で「その図はなに?」と自然に東電原発事故が話題になった、との感想が寄せられている。
■「福島の子供に着せたい」
2枚で1セットとしたのは「Tシャツを着ている自分だけお利口さんになるのではなく、今起きていることを誰かに伝えてほしい」との思いから。須永氏はさらに「福島県内の子供に着せて、眠っている大人の良心を呼びさましたい」と考える。1セットの内1枚を、支援団体を通じて寄付する仕組みを構想中だ。
Tシャツはこれまでに約300枚を販売。10月3日からは同じ図柄を用いたパーカー(予約販売、4000円・送料別)も新たに発売予定だ。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年9月29日