埼玉県加須市の旧騎西高校には、今も768人の福島県双葉町民が避難している。10月1日、同校に隣接する農地に「双葉町元気農園」が開園した。「少しでも心身をリフレッシュして元気になってもらいたい」と埼玉県加須農林振興センターら地元有志が企画した農園だ。
開園式には、双葉町の井戸川克隆町長と農園利用を申し込んだ約20人の町民、および加須農林振興センターや内田ヶ谷東部営農生産組合など多数の関係団体が参加した。
1141平方メートルの農園に、複数の団体や企業から寄贈された苗が植えられている。肥料や農具は双葉町役場が用意した。今後は双葉町民が主体となって運営していく。ベテラン農家の町民が園長を務め、利用者らが自由に野菜を育て、収穫する。
9月30日に、政府は20~30キロメートル圏内の「緊急時避難準備区域」の解除を発表した。しかし双葉町は全域が20キロメートル圏内の「警戒区域」内。法的に立ち入りが制限されている。
約7000人の町民は、緊急避難で自宅を出て福島県内の避難所に散った。そのうち1000人以上が3月19日に役場機能ごと「さいたまスーパーアリーナ」(さいたま市)に集団避難した。アリーナの受け入れ期限を迎えて3月末に移動した先が、旧騎西高校だった。
その後、周辺の賃貸住宅などに移り住んだ人もいるが、いまだ700人を超える大所帯で避難生活を送っている。校内に炊事場はなく、食事は、朝、昼、晩とも仕出し弁当だ。
双葉町民のための農園づくりは5月から計画されていた。地元と双葉町民が協力して校舎に「緑のカーテン」を設置した際、支援団体から苗が提供され、校内での野菜栽培が始まった。6月に農地が決まり、7月には校内で育てていた苗が移植された。町民が新鮮な野菜を食べられるよう、サラダにできる葉物野菜や、漬物にできるダイコン、ハクサイ、ナスなどの苗も寄贈された。
加須農林振興センター管理部の稲場康仁(いなば・やすひと)企画担当部長は、「双葉町の皆さんが一日も早く故郷に戻れることが一番だが、加須市に避難している間も笑顔で元気に過ごせるよう支援していきたい。この農園を通じて地元住民との交流も企画したい」と抱負を語った。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)
埼玉県加須農林振興センター
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