福島市を拠点に活動する「市民放射能測定所」(丸森あや理事長)が、独自の「生活手帳」を発行した。原発事故後の行動や食生活などを記録して、低線量被曝の影響を検証する際の資料としてもらう。出版社を通じて全国の書店で販売するとともに、売り上げなどで福島の子どもたちに無料配布する計画。一冊税込み300円。
保護者と子どもの名前、住所を書き込むページには、体内に取り込まれた放射性物質の核種を調べるときのために髪の毛や乳歯を張り付けておく欄がある。
3月中の記録は、自家栽培の野菜を食べたかや、どんな水を飲んだか、屋内外のどこで何時間過ごしたかなどの状況を細かく記入できる。その後は来年の3月11日まで、毎日の所在地と行動、体調、食事、出費や放射線量などを記入する形だ。
放射線の基礎知識がわかるQ&Aや、専門家によるアドバイスも盛り込んだ。八王子中央診療所理事長で小児科医の山田真さんは、低線量被曝の長期的な影響についてはまだよくわかっていないとしたうえで、「チェルノブイリ原発事故後のその後の経過などを見れば、5年先、10年先に子どもたちの間でがんや白血病が多発するという最悪の事態をも想定しておかねばなりません。それらの病気は早期発見すれば治療可能なケースも多いということもあり、長期にわたって被ばくした子どもたちの丁寧な健康管理をしておくことが絶対に必要です」として、この手帳を健康管理と異常の早期発見に役立ててほしいと記している。
同測定所は7月に正式に発足。市民の基金で食品の放射能検知器をそろえ、無料の測定を続けてきた。10月1日から福島駅前の商業施設1階に場所を移すとともに、ホールボディーカウンターによる内部被曝測定の受け付けも始めた。
原発事故の被災者に対しては、福島県弁護士会が「福島県原子力災害被災者・記録ノート」を、同県飯舘村の住民有志が「健康生活手帳」をまとめるなどして、記憶が薄れる前に詳細な記録を残しておくよう呼び掛けられている。(オルタナ編集委員=関口威人)