横浜市港北区のマンションの屋上の堆積物から、東京電力福島第一原発事故で放出されたとみられる放射性物質のストロンチウム90が検出されたことが12日に明らかとなったが、福島第一原発から250キロメートル以上離れた横浜市で検出されたことで、同物質が東日本の広範囲に拡散している疑いが極めて濃くなった。
■大気圏核実験由来の可能性薄
検査はマンションの住民の依頼を受けた民間検査機関が行い、検出値は堆積物1キログラム当たり195ベクレルだった。ストロンチウム90は通常、過去の大気圏内核実験で放出されたものが検出されるが、マンションは築年数が浅く、その可能性は薄い。
ストロンチウムは人体に取り込まれた際にカルシウムに似た挙動を示し、主に骨に吸収される。そのため、半減期の長いストロンチウム90が吸収された場合、体内で長期間放射線を出し続け、ガンなどのリスクを高めることが懸念される。
ただしNPO原子力資料情報室の古川路明氏は「今回検出された程度では、人体に大きな影響があるとは思わない。むしろ放射性セシウムが4万ベクレル程度検出されており、そちらの方が心配」と冷静だ。
■ホットスポットは要注意
原発問題に取り組むNGO「たんぽぽ舎」の原田裕史氏も、今回の数値について「これまで他の地域で測定していなかっただけで、今回を上回る検出値があちこちで出ることは十分に考えられる」と指摘し「特に驚くには当たらない」と話す。
その一方で原田氏は「マンションの屋上で泥が雨に流されて堆積し、ストロンチウムの濃度も高くなったのでは」と推理した上で「放射性セシウムが高い値で検出されたホットスポットでは、ストロンチウム90の値も高くなる可能性がある」と注意を促した。
文部科学省の担当者は「今回検出されたストロンチウムが福島原発由来のものか確かめる必要がある」と慎重な姿勢だが、「確認されればホットスポットなどから優先的に調査することになるだろう」と語った。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年10月12日